不眠の子守唄

書評ブログ。たまに本以外も。読書は海外文学、音楽は洋楽多め。

チェーホフ『ワーニャ伯父さん』あらすじ・感想ー絶望の中で生きるということ

先日、映画『ドライブ・マイ・カー』を観た。この映画の中で重要なモチーフとなっているのが、チェーホフの戯曲『ワーニャ伯父さん』であるが、この作品の内容が気になったので積読していたこの本を読んでみた。 今回は、『ドライブ・マイ・カー』で言及され…

【コミックと原書の違い】『戦争は女の顔をしていない』解説・感想

2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシェーヴィチの代表作であるノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』は、岩波現代文庫からも出ているが、KADOKAWAからコミック版(作画・小梅けいと)も出ている。 ここでは、原書とコミック版…

ザ・スミス(The Smiths)の名盤・名曲おすすめランキング【死にたくなったら聴く曲】

「好きなバンド」を聞かれたときに、公言しても何も問題ないバンドと、やや公言するのが憚られるバンドがある。 イギリスのロックが好きだと言った場合、たとえばビートルズは好きだと公言するのに何も問題はない。聞いた人に「何そのバンド?」と思われる恐…

学習まんが『日本史探偵コナン』評価・レビュー【小学校低学年にはおすすめ!】

◆この記事は◆ 『日本史探偵コナン』(小学館)を読んだので、その評価について書きます! 小学生の親戚にプレゼントする本を考えていた時に、小学館から『日本史探偵コナン』という学習漫画が出ていることを知りました。 私自身、小学生時代に学習漫画はよく…

フランツ・カフカ『変身』あらすじ・感想ー現代の社畜の悲劇として考察する

海外文学はそれなりに読んできたが、カフカはいまいち「わからない」という感想を持っている作家だ。 しかし、むしろ、わからないところがクセになるともいえる。面白さがよくわからなくても、読み終わると「すごいものを読んだ」という気持ちになる。 その…

映画『ドライブ・マイ・カー』と、村上春樹の原作との違いと【感想】

映画『ドライブ・マイ・カー』を観たので、今更ながら感想を書こうと思う。 この映画は、村上春樹の短編集『女のいない男たち』に所収されている短編「ドライブ・マイ・カー」を原作とする、濱口竜介監督による映画である。カンヌ国際映画祭で脚本賞も受賞し…

徹底解説!新書のレーベルごとの特徴まとめ【新書とは?】

◆この記事は◆各出版社から刊行されている「新書」について、8つのレーベルを取り上げてその特徴をご紹介します。 「新書」とは何か、ご存じでしょうか。 「新書」という言葉には「新しい書物」を指す場合もありますが、ここでいう「新書」とは「新書判」(約…

ジーン・リース『サルガッソーの広い海』あらすじ・感想ー名作と植民地の暗部

「世界で最も評価されている二次創作」は、もしかするとジーン・リースの『サルガッソーの広い海』という小説かも知れない。 モダン・ライブラリーの「Modern Library 100 Best Novels」にも選ばれているこの小説は、シャーロット・ブロンテの『ジェーン・エ…

英国流のブラックユーモア小説ーイーヴリン・ウォー『大転落』【あらすじ・感想】

イーヴリン・ウォーという小説家は、日本ではそこまで有名ではないかもしれないが、イギリスでは『情事の終り』などで知られるグレアム・グリーンと双璧とされるカトリック作家であるという。 過去にこのブログでも紹介したウォーの代表作『回想のブライズヘ…

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』あらすじ・感想ー現代小説の傑作

死後80年近く経っているにもかかわらず、最近今まで以上に注目を集めている作家がいる。イギリスの女性作家、ヴァージニア・ウルフだ。 ウルフは「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分一人の部屋を持たねばならない」とした講演『自分ひとりの部屋』が…

井伏鱒二『黒い雨』あらすじ・感想ー原爆の不条理さに翻弄される庶民

最近(2021年)「黒い雨訴訟」が話題となった。 「黒い雨」というのは、原爆投下後に降り注いだ、原爆投下時に生じた煤や放射性物質を含んだ、言葉通り黒色をした雨のことである。 つまり、原子爆弾によって直接被爆しなかった場合であっても、放射性物質を…

ブラー(Blur)の名曲・名盤おすすめランキング【全アルバム評価】

以前、オアシス(Oasis)のアルバムランキングを書いたが、1990年代のイギリスで「ブリットポップ」と呼ばれる音楽シーンをオアシスとともに牽引したバンドが、ブラー(Blur)である。 地方の労働者階級出身のオアシスに対し、ロンドンの中産階級出身のブラ…

『若きウェルテルの悩み』でウェルテルはなぜ自殺したのか【あらすじ・感想】

「ウェルテル効果」という言葉がある。 有名人の自殺がマスメディアによって報道されると、それに影響されて自殺者が増える現象を表す言葉である。この名前は『若きウェルテルの悩み』の主人公ウェルテルにちなみ、この現象を実証した社会学者ディヴィッド・…

文庫1冊以内! おすすめの日本文学の名作10選

このブログでは海外文学ばかり取り上げてきたが、日本文学も好きである。 以前海外文学のおすすめ10選を取り上げたので、せっかくなので対になるように日本文学のおすすめもしてみようと思う。 海外文学には、その地域特有の文学の魅力がある。しかし、日本…

「読んではいけない」本ーセリーヌ『夜の果てへの旅』【あらすじ・感想】

東京大学出版会から出ている『教養のためのブックガイド』という本があり、おもしろいのだが、その中で一番面白いのは「読んではいけない」本も挙げられていることである。 そのような「読んではいけない15冊」として挙げられているうちのひとつが、フランス…

レディオヘッド(Radiohead)の名盤・名曲おすすめランキング【全アルバム評価】

「レディオヘッドの良さがわからない」という人、あなたは正常である。 でも、私はレディオヘッドが好きだ。 とはいえ、私も最初からレディオヘッドが好きだったわけではない。私も昔は、到底ポップとは言えないレディオヘッドの曲をありがたがる人の気持ち…

クッツェー『恥辱』あらすじ・感想ー現実にどう向き合うか

都内の大学の教授が過去に教え子と性的関係を持ち、教え子から告発されたらしい。申し立てが事実なら、大学から追われることになるだろう。 ところで、「大学教授が学生に手を出して懲戒処分になる」ところから始まる小説といえば、ノーベル文学賞作家ジョン…

コンラッド『闇の奥』ー「文明」と「野蛮」の対立と親和【あらすじ・感想】

先日、日本語を母語としない台湾出身の李琴峰さんが、『彼岸花が咲く島』で第165回芥川賞を受賞した。母語以外での作家活動なんて私には想像もできないくらい大変だと思うが、基本的に日本語で読書をする一読者としては、李さんのような作家の活躍は非常に嬉…

【祝!復活】ABBA(アバ)のおすすめアルバムランキング

ABBA(アバ)が再結成するらしいと聞いたのは、もう3年前のことか。いったいいつになったら新曲がリリースされるのかと思っていたが、先日ついに配信された。聞いたところ、めちゃくちゃABBAでびっくりしてしまった。 もちろん私の年齢ではアバの活躍はリア…

最良のノスタルジー小説は『回想のブライズヘッド』である【あらすじ・感想】

コロナ禍の現在では、友人と顔を合わせて語らい、共に旅行をした日々でさえ、もはやノスタルジーの対象となってしまった。 そんなノスタルジックな気分に浸ると思い出すのは、イギリスの作家イーヴリン・ウォーの『回想のブライズヘッド』という小説だ。 最…

カズオ・イシグロ『遠い山なみの光』というミステリー【あらすじ・感想】

世の中には三種類の作家がいる。デビュー作が一番読みやすい作家と、デビュー作が一番読みにくい作家と、どちらでもない作家だ。 ーーそんなことは当たり前なのであるが、しかし、色々な作家について、この3種の中のどれであるかを考えるのかは意外と面白い…

ショートショートの神様・星新一はワクチン陰謀論も描いている

コロナ禍という不運 新型コロナウイルスの流行に見舞われるなんてつくづく運の悪い人生だと思う。 しかも私の場合、20代前半というバラ色のはずだった(!)時期を、自粛一色に染められるなんて! もしコロナがなければ、新たな出会いもあっただろうし、海外…

講談社のコミックスはKindleで無料になっていることが多いという話

最近Kindle Paperwhiteでよくマンガを読んでいる。 この記事にも書いた通り、Kindle Paperwhiteは本来マンガより普通の電子書籍に向いた端末ではあるように思うのだが、ディスプレイが目に優しいので寝る前にマンガを読むのであればちょうどいい。 というわ…

【名曲ランキング】ビートルズの個人的おすすめ曲20選

タイトルの通り、ビートルズの名曲を独断と偏見で紹介する。 ビートルズをあまり聴いたことがない方には、このランキングを見て「こんな曲もあるのか」と思っていただきたいし、ビートルズのファンには、このランキングを見て「こいつとは感性が合うな」と思…

ビートルズの『Let It Be』と『Let It Be... Naked』はどちらがいいのか

忙しくても楽しめるのは、書籍と違う音楽の良さである。最近は何か用事をしながら音楽を聴くのを楽しみにしている。 保守主義者?(懐古主義者?)なので最近はThe Beatlesばかり聴いていたのだが、今まであまり好きでなかった『Let It Be』(曲じゃなくてア…

【完結】『進撃の巨人』に残された未解決の謎について考察してみる

『進撃の巨人』が完結した。この作品が、少年漫画史に残る傑作であることに疑いの余地はない。何よりも『進撃の巨人』が傑出しているのは、精緻に組まれた物語の中で、次々と伏線というか謎が解明されていき、全体像が見えていった点である。物語が結末する…

カズオ・イシグロ『クララとお日さま』の不気味さ【感想・考察】

カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞してから初の長編小説である『クララとお日さま』が、ついに刊行された。 「AIと少女の交流を描く感動の物語」という触れ込みの本作品だったが、実際に読んでみると、かなり不気味な作品である。「美しい小説」を求め…

プロジェクトXは書籍版も面白いという話

小学校高学年の親戚に何か本をプレゼントしようと思った時に、自分が小学生の頃に夢中で読んだ本を思い出した。 フィクションはいろいろあるけど、ノンフィクションも捨てがたい。 自分が一番夢中になって読んだノンフィクションは、NHKの『プロジェクトX』…

文庫1冊以内! 初心者におすすめの海外文学10選【地域別】

海外文学の名作といわれる作品には、長くて読み始めるのに勇気がいる作品が多い。でも、読んでみると日本の小説と違った面白さがある。 今回は、文庫本一冊で読める、はじめて海外文学を読むという方にも遠慮なくお薦めできる海外文学を紹介したい。 以前よ…

人間性と芸術のあいだーモーム『月と六ペンス』あらすじ・感想

タイトルが秀逸な小説と聞かれて真っ先に思い浮かぶのが、サマセット・モームの『月と六ペンス』という小説だ。 この小説は、パリでの実業家生活ののち画家に転身し、晩年はタヒチで暮らした画家ポール・ゴーギャンをモデルにした小説だ。今回は、この小説に…