不眠の子守唄

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あだち充のおすすめ作品10選【ランキング】

◆この記事は◆あだち充先生(以下、敬称略)の名作ランキングベスト10をご紹介します!

 

「一番好きな漫画家」を聞かれたら、私は「あだち充」と答えます

あだち充作品は、ごく初期の作品を除いてすべて読んできました。

なぜあだち充作品が好きなのかというと、個人的な事情としては、家族・親戚にファンが多かったために、子どものころからあだち充作品に親しんできたことが理由です。あだち充の描く風景(多くの作品では東京都練馬区が舞台のモデルのようです)に、どことなくノスタルジーを抱くからでもあります。

またあだち充作品の特徴は、スポーツを絡めた青春ストーリーと、そこに流れる叙情的な雰囲気であるといえますが、こうした話や雰囲気が好みだからというのが一般的な理由です。たとえばダークファンタジー好きには、あだち充作品はおすすめできませんが、青春マンガが好きな人は、ぜひ一度あだち充作品を読んでほしいと思います。

あだち充には多くの作品がありますが、ここでは作品をランキング形式で10作ご紹介します。どれも珠玉の青春ストーリーですので、興味を持った作品があったらぜひ読んでみてください。

1.『H2』

私は、あだち充の最高傑作は『H2』だと思っています。

その理由を簡単に言えば、『H2』はあだち充作品のエッセンスが一番凝縮された、完成度の高い作品だと思うからです。

ここでいうあだち充作品のエッセンスとは、

・野球などのスポーツを中心とした、青春ラブコメであり、

・ラブコメの肝は三角関係であり、

・爽やかな一方で、「喪失」が描かれる儚さをたたえたストーリーである

というところです。

(このほか、「血のつながらない家族関係」みたいなものも、あだち充はしばしば描きますが、この要素は『H2』にはないです)

 

中でも『H2』は、あだち充が最も得意とする「高校野球を中心とした青春ラブコメ」の最高傑作だと思います。

ともに中学野球で全国に名をとどろかせた主人公・国見比呂親友にしてライバル・橘英雄が別の高校(比呂はわけあって超・弱小校、英雄は名門校)に進学したところからストーリーは始まります。

序盤は主人公の比呂が千川高校をどんどん成長させていく、ただひたすらワクワクするストーリーですが、物語終盤にかけて「三角関係」や「喪失」が顔を出していき、どこか儚い青春ストーリーになっていきます。

きれいな終わり方が多いあだち充作品の中でも、『H2』のラストは圧巻です。とにかく、あだち充の傑作を読んでみたい方は、一度この作品を読んでみてください。

 

◆文庫版は全20巻。長いけど飽きない長さです!

2.『ラフ』

二番目におすすめしたいのは、『ラフ』です。この作品も例のごとく、スポーツを中心としたラブコメですが、主人公がしているのは「水泳」です。

私が『ラフ』が好きなのは、この作品が青春群像劇であることです。

『ラフ』の舞台は寮制の高校で、主人公含めた変わり者たちの寮生活は読んでいて楽しいです。主人公以外の描写が非常に多いというわけではないのですが、主人公以外の登場人物も含めた青春が描かれていて、非常に爽やかな作品です。

あだち充作品は「喪失」が描かれることが多いと先述しましたが、『ラフ』は『H2』に比べるともの哀しさはなく、最後まで爽快です。

『ラフ』もラストのシーンは、マンガ史に残る名場面です。

 

あとはラブコメ的な観点では、主人公とヒロインが、ロミオとジュリエット的な設定なのが良いです。典型的ですがやっぱり面白いです。

 

◆文庫版は全12巻。初めて読む方にもおすすめしやすい長さです!

3.『タッチ』

三番目におすすめしたいのが『タッチ』

「あだち充作品といえばタッチ」という方も多いのではないでしょうか。アニメ化もされ、あだち充を一躍国民的な漫画家に押し上げた作品です。

 

超有名作品なだけあって、やはりおすすめです

あまりにも有名なのでここまではネタバレしても問題ないと思いますが、浅倉南と上杉達也・和也の双子の兄弟という三人の幼馴染の関係をテーマにした作品です。しかし、物語序盤で和也は交通事故で亡くなって……。

和也という死者の影と向き合う達也のストーリーは、文学としても面白いと言えるレベルです。

 

ただ、個人的にはサブキャラクターが充実した『H2』や『ラフ』の方がワイワイしていて楽しく、またのちの作品であることもあり展開も洗練されている気がするので、おすすめ順は3番目にしました。

また、あだち充作品の特徴は「無音の背景」が語ることにあるともいわれますが、むしろ『タッチ』はこの傾向があだち充作品の中でも最も強い気がします。「あだち充作品の雰囲気」が存分に発揮された作品としては、やはり『タッチ』がおすすめかもしれません。

 

◆文庫版は全14巻。物語後半は一部少しだけワクワク感が下がるが、それでもきれいにまとまっている。

ちなみに現在連載中の『MIX』(ミックス)は、『タッチ』の続編です。時代は最近なので作品の雰囲気は『クロスゲーム』に近いですが。

『タッチ』が好きで、なおかつ『クロスゲーム』が好きな場合は、おすすめです。ですが、『MIX』を『タッチ』より先に読むのはおすすめしないので、必然的に『MIX』のおすすめ度は『タッチ』よりも下になってしまいます。

 

 

4.『クロスゲーム』

「あだち充の三大傑作」を挙げるとすると『H2』『ラフ』『タッチ』の三作で一般的に異論は少ないと思うのですが、それ以降は好みが少し割れるかもしれません。

 

個人的に次におすすめなのは、『クロスゲーム』です。

この作品も、高校野球が軸です。また『タッチ』同様に、「死者」が物語の基底となっています。この説明を聞くと『タッチ』の焼き直しに思えるかもしれませんが、実際にはそこまで『タッチ』と似ているという印象は受けません。

物語の軸もすっきりしていてわかりやすく、おすすめの作品です。

 

◆サンデーコミックスで全17巻。高校野球は3年で卒業するのでテンポがいい。

5.『みゆき』

次におすすめなのは、あだち充初期のラブコメ作品である『みゆき』

『タッチ』と並行して描かれていた作品です。

 

本作は、あだち充作品では珍しいスポーツが絡まないラブコメディー

また、「血のつながらない兄妹」をテーマにしています。あだち充作品は「血のつながらない家族」がほんとうによく出てきますが、この作品は典型的です。

すでにお察しかとおもいますが、義理の妹・みゆきと、もう一人のみゆきとの三角関係をテーマにしています。

今読むと、かなり時代の違いも感じますが、80年代ラブコメの傑作です。

 

◆サンデーコミックス版で全12巻。スポーツが絡まない分短めです。

6.『KATSU!』

次におすすめしたいのは『KATSU!』です。

 

『KATSU!』は、野球ではなくボクシングを描いた作品。あだち充というと野球のイメージが強いかもしれませんが、ボクシングもよく出てきます。『タッチ』でも出てきますし、『スローステップ』はボクシングを主題にした作品です。また、家族も主題です。

少し展開・登場人物が『H2』と『ラフ』『タッチ』の焼き直しの印象があってゴチャゴチャしている(ボクシングは階級やプロ制度が野球と違うのも理由です)ところは少しマイナスですが、最終盤での台詞まわしは流石あだち充。読み終わったときの満足度は『H2』などの作品に決して劣りません。

また、ヒロイン・水谷香月の造形は人気が高い気がします。「物語開始時点では最強のヒロイン」が主人公を教育する話が好きな人にはおすすめです。

 

◆文庫版は全9巻と、比較的短め。

 

 

7.『スローステップ』

次におすすめなのは、先ほども紹介した『スローステップ』

 

主人公はソフトボールをプレイし、主人公を取り巻く男性たちはボクシングをプレイしているという要素はありますが、少女誌に掲載された少女漫画なこともあってか、スポーツをプレイしているシーンは非常に少ないです。

ラブコメとしては、古典的な主人公が一人二役をする「入れ替わりもの」ですが、ストーリーはかなり気ままに展開します

いわゆる「ラブコメ」の常識が通用しないこの作品は、あだち充作品に特徴的な「間」を味わうことができます。故・中島らもが獄中で読んで絶賛した作品らしいですが、その理由もわかる気がします。

 

◆文庫版は全四巻。

8.『ショート・プログラム』

ここで紹介した『ショート・プログラム』は短編集です。

 

「あだち充が描こうと思ったけれど、長編にはならないもの」がテーマとなっていることが多いです。また、あだち充の長編と違い、主人公の年齢層が高校生より上になっていることが多い気がします。

短編集なので、素晴らしい作品もあればイマイチな作品もありますが、あだち充の描き出す雰囲気を味わうにはうってつけの本です。

 

◆『ショート・プログラム』は全三巻。

9.『虹色とうがらし』

あだち充作品に親しんでいる方にとっては当たり前だと思いますが、あだち充といえば落語マニアです。次におすすめする『虹色とうがらし』は、あだち充の好きな落語や時代劇といった要素が盛り込まれた作品です。

 

あだち充作品のラインナップでは異色の作品ですが、あだち充が本来書きたかったものを存分に書いている印象を受けます。

ちなみにこの作品は時代劇的でありつつも、時代考証等の制約から逃れるため、物語の舞台は江戸時代風の「未来」ということになっています(そのため「時代劇でもありSFでもある」という摩訶不思議な作品になっています)。このことからも、あだち充が「書きたいものを書いている」というのが伝わると思います。

あだち充ファンには一度読んでほしい作品です。ただし、普遍的な魅力という意味では他の作品に軍配が上がるように思われるので、「最初に読むあだち充作品」としては、やはり『H2』か『ラフ』をおすすめしたいです。

 

◆文庫は全6巻

10.『じんべえ』

最後に紹介するのは『じんべえ』

 

文庫一冊で終わる作品で、短いこともあってあだち充作品の中で最も無駄がない作品の一つでだと思います。

一番のテーマは「血のつながらない家族」なので、このテーマがあまり好きでない人は読まなくてよいと思いますが、このテーマに興味があるにはうってつけの「あだち充入門」です。スポーツ(サッカー)も出てきます。

 

◆全一巻。

じんべえ

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おわりに

以下が、あだち充作品のおすすめランキングです。

個人的には、あだち充作品を未読の方には『H2』『ラフ』がおすすめです。

また、ここに紹介しなかったあだち充作品もあるので、あだち充作品に興味を持った方はぜひ他の作品も読んでみてください。

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