あまりにも有名だが、ドストエフスキーは、かつて死刑囚であった。 若き日のドストエフスキーは、ペトラシェフスキーの主宰する社会主義サークルに所属し、皇帝(ツァーリ)の統治下にあって、社会の変革を目論んだために官憲に逮捕された。ペトラシェフスキ…
海外文学や古典的作品の醍醐味は、その物語の舞台が私たちの日常とは異なる「異世界」でありながら、そうした世界は現実に存在していた、あるいはしているというところにある。 個人の好みではあるが、私はそうした「まったく知らないけれど、現実に存在して…
スパークスというアメリカのバンド(というかデュオ)がある。 スパークスは1960年代(!)から活動している、ロン・メイルとラッセル・メイルという兄弟によるデュオだが、二人とも健在でいまだに創作意欲は旺盛で、ここ最近日本でも話題にあがることが増え…
「まあ、ジョイボイさん、きれいですこと」 「ええ、うまく仕上がったでしょう」彼は鶏肉屋がするように腿を軽くつまんでみて、「柔らかい」と言った。一方の腕を上げてそっと手首を曲げた。 「ポーズをとらせるまでに二、三時間はかかるでしょう。頸動脈の…
わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外にはすることのない毎日でした。 「アフリカの外で初めて英語で出版されたアフリカの小説」(Wikipediaより)であるという、ナイジェリアのエイモス・チュツオー…
政府なんて無いほうがいいのではないかと思わずにいられない出来事が世界で起きている。無政府主義こそが理想なのかもしれない。 しかし、現実には「無政府主義」が想像した通りの理想的なものにはならないだろう、ということは理解している。 無政府主義は…
2021年に生誕200年を迎えたドストエフスキーの作品は「現代の予言書」と言われる。誰が言い始めたのか厳密にはわからないが、たとえば新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』に寄せられた原卓也の解説には「この作品は今日でもなお、人類の未来に対する予言的なひ…
世界文学上に今なお燦然とその輝きを放ち続ける巨匠レフ・トルストイの作品『アンナ・カレーニナ』は、現代でも名前はおそらく多くの方が聞いたことがあると思う。 そしてこの物語が、主人公アンナ・カレーニナが、熱狂的な恋愛の末、鉄道自殺を遂げる……とい…
かつて進路について考えていたころ、ある人から「一番難しい目標を目指せ」と言われたことがある。 「難しい目標」はそのタイミングを逃したら叶えることができないが、そこまで難しくない目標であれば、難しい目標に夢破れた後でも叶えることができるかもし…
長いあいだ閉じこもった部屋にこもりきりになる経験は、コロナ禍で多くの人が思わず経験することになったかもしれない。私もその一人である。 閉じこもった生活を続けた後で太陽のもとに出ると「生きていること」の素晴らしさを実感する。そして、なんでもで…