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古典的名作

  • 2023年7月3日
  • 2024年3月19日

『ダロウェイ夫人』【あらすじ・感想】ーヴァージニア・ウルフが命を賭けた小説

ヴァージニア・ウルフの『ダロウェイ夫人』 は、ちょうど今から100年前を舞台にした小説である。 この小説は、近代文学を代表する作品であるジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』同様、ある一日を「意識の流れ」と呼ばれる手法で描いた小説である。ちなみに『ダロウェイ夫人』の舞台は1923年6月13日で、ぴったり100年を迎えた時 […]

  • 2023年6月18日
  • 2023年7月2日

知の巨人・エーコの遺作『ヌメロ・ゼロ』―衰退してゆく国家への視線【あらすじ・感想】

ベルルスコーニが死んだ。ベルルスコーニといえば、実業家として特にテレビ局などのメディアを掌中に収めた「メディア王」であり、汚職や脱税など数多くの不正疑惑で捜査を受けつつも、合計9年以上イタリアの首相の座にあった人間である。アメリカのトランプもベルルスコーニに重ね合わせられることも多かったが、そういう人間である。こういう […]

  • 2023年5月1日
  • 2023年5月1日

三島由紀夫のライトノベル『夏子の冒険』あらすじ・感想

「なにか日本の小説を読みたいんだけど、何を読めばいい?」 ――というようなことを聞かれると、「とりあえず三島由紀夫を読めばいいんじゃない?」 と、やや投げやりとも捉えられがちな答えをしてしまうが、しかしこれは私の本心である。 とはいえ、私も三島由紀夫の作品をすべて読んだことがあるわけではないのだが(なざなら、三島作品を […]

  • 2023年4月18日
  • 2023年7月4日

手塚治虫の問題作『奇子』【書評・感想】ー敗戦国と人間の業の深さ

手塚治虫の作品の中でも、最も悪名高い(?)問題作の一つは、『奇子』(あやこ)だろう。 悪名高い、問題作という言葉について誤解のないように書いておくと、この作品は、手塚治虫作品の中で劣っているなどということではない。最高傑作とは言えないとしても、手塚治虫が描いた成人向け漫画の中で屈指の名作の部類であるのは間違いない。 こ […]

  • 2022年8月8日
  • 2023年7月4日

『死の家の記録』【書評・感想】ードストエフスキーが描くシベリア監獄のリアル

あまりにも有名だが、ドストエフスキーは、かつて死刑囚であった。 若き日のドストエフスキーは、ペトラシェフスキーの主宰する社会主義サークルに所属し、皇帝(ツァーリ)の統治下にあって、社会の変革を目論んだために官憲に逮捕された。ペトラシェフスキーはじめ、ドストエフスキーらサークル員は死刑判決を受けたが、銃殺直前になって皇帝 […]

  • 2022年5月18日
  • 2022年10月19日

アチェベ『崩れゆく絆』が絶対に読んでほしい海外文学である理由【あらすじ・感想】

海外文学や古典的作品の醍醐味は、その物語の舞台が私たちの日常とは異なる「異世界」でありながら、そうした世界は現実に存在していた、あるいはしているというところにある。 個人の好みではあるが、私はそうした「まったく知らないけれど、現実に存在していた世界」との邂逅が好きである。 こうした海外文学を読む喜びを感じさせてくれた一 […]

  • 2022年3月27日
  • 2022年10月19日

ブラックな葬儀ビジネス小説ーイーヴリン・ウォー『愛されたもの/ご遺体』あらすじ・感想

「まあ、ジョイボイさん、きれいですこと」 「ええ、うまく仕上がったでしょう」彼は鶏肉屋がするように腿を軽くつまんでみて、「柔らかい」と言った。一方の腕を上げてそっと手首を曲げた。 「ポーズをとらせるまでに二、三時間はかかるでしょう。頸動脈の縫い合わせが見えないように首をいくぶん曲げなくてはなりませんね。頭の地はとてもう […]

  • 2022年3月27日
  • 2022年10月19日

異質なファンタジーとの出会いーチュツオーラ『やし酒飲み』あらすじ・感想

わたしは、十になった子供の頃から、やし酒飲みだった。わたしの生活は、やし酒を飲むこと以外にはすることのない毎日でした。 「アフリカの外で初めて英語で出版されたアフリカの小説」(Wikipediaより)であるという、ナイジェリアのエイモス・チュツオーラによる小説『やし酒飲み』は、上に掲げたような特徴的な文章から始まる。 […]

  • 2022年3月24日
  • 2022年10月19日

ほんとうの無政府主義者とは?ーチェスタトン『木曜の男』あらすじ・感想

政府なんて無いほうがいいのではないかと思わずにいられない出来事が世界で起きている。無政府主義こそが理想なのかもしれない。 しかし、現実には「無政府主義」が想像した通りの理想的なものにはならないだろう、ということは理解している。 無政府主義は理想だとしても、実現はしない。 それと同様に、「ほんとうの無政府主義者」なるもの […]

  • 2022年2月9日
  • 2022年10月19日

ドストエフスキーの『罪と罰』は、「現代の予言書」なのか?【感想・考察】

2021年に生誕200年を迎えたドストエフスキーの作品は「現代の予言書」と言われる。誰が言い始めたのか厳密にはわからないが、たとえば新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』に寄せられた原卓也の解説には「この作品は今日でもなお、人類の未来に対する予言的なひびきを失わわぬばかりか、いっそう強めてさえいるのである。」と書かれている。 […]