私事だが、戦国武将の逸話集を読むのを、一時期ライフワークにしていたことがある。いわゆる「戦国マニア」というより「戦国武将マニア」である。
一般的なムック本で戦国武将に関する知識はいくらでも手に入れることができるが、情報の正確性などに不安がある本は多い。
そこで、より多くの・かつ正確な逸話を知りたいと思いはじめた「戦国マニア中上級者」の方々向けに、逸話集をまとめたので、お役に立てば幸いである。
なお、「正確な逸話」と上で述べたが、逸話というものは、もちろん史実であるとは限らない。その一方で逸話は世の中の共通知識として教養であるのは確かなのである。
- 「名将言行録」ー武将別逸話集の決定版ー
- 「明良洪範」ー江戸時代初期大名の逸話集ー
- 「信長公記」ー織田信長の公式記録ー
- 「甲陽軍鑑」ー武田氏の合戦を知るにはー
- 番外編・「戦国ちょっといい話・悪い話まとめ」
(適宜更新予定)
「常山紀談」ー戦国武将逸話集のー
「戦国武将の逸話」を語るうえで絶対に外せないのが、この「常山紀談」である。
太宰春台の弟子である儒学者・湯浅常山によって18世紀に成立した。簡潔で分かりやすい豪快磊落で勇猛な「武将像」を描き出した逸話集であり、それゆえ戦前には教科書にもよく取り上げられていた。しかしながら、現代ではその知名度は見る影もない。
その理由が、「葉隠」などと同様に
「戦時中にもてはやされたあらゆる本と同様に、大ざっぱに荒縄でひっくくられれ、ごみための中へ捨てられた、いとうべき醜悪な、忘れ去らるべき汚らわしい本の一つと考えられていたから」(三島由紀夫「葉隠入門」)
であったら、残念なことである。たしかに旧来的な価値観を感じる本でもあるが、しかし、逸話集としても大変優れている本である。
▼デジタルコレクションの無料版
▼現代語訳版
「名将言行録」ー武将別逸話集の決定版ー
幕末の館林藩士・岡部繁実によって編纂されたのがこの「名将言行録」である。その名の通り、「名将」別に逸話がまとめられている。
いちばん成立年代が新しいため、原文で読むならやや読みやすく、完成度も高いかもしれない。ただ、成立年代が新しいため「常山奇談」に比べると純度が劣るというのは欠点である。
上級者向けにこの本について述べると、一冊目に出典となった本の一覧が記されているのは非常に参考になる。
▼デジタルコレクションの無料版
名将言行録. 前編 下巻 – 国立国会図書館デジタルコレクション
名将言行録. 後編 上巻 – 国立国会図書館デジタルコレクション
名将言行録. 後編 下巻 – 国立国会図書館デジタルコレクション
▼菊池寛による抄録「評註名将言行録」
評註名将言行録. 中 – 国立国会図書館デジタルコレクション
評註名将言行録. 下 – 国立国会図書館デジタルコレクション
▼現代語訳版
「明良洪範」ー江戸時代初期大名の逸話集ー
純粋な戦国武将の逸話集というわけではないが、「常山紀談」の次に重要な江戸時代に成立した戦国武将の逸話集は、この「明良洪範」ではないかと思う。
16世紀後半から18世紀初頭までの徳川氏、諸大名や武将の言行が描かれている本である。
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(現在刊行されているものは確認できず)
「信長公記」ー織田信長の公式記録ー
「戦国武将の逸話集」というわけではないが、戦国時代の最重要人物の一人・織田信長の事績を追ったこの「信長公記」は外せない。
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「甲陽軍鑑」ー武田氏の合戦を知るにはー
逸話集ではないが、有名どころとしてこの「甲陽軍鑑」が挙げられる。
この本は、武田信玄ら甲斐武田氏の兵法書・軍学書であるが、合戦の際の逸話などを知るためには優れた本である。
▼現代語訳版
(デジタルコレクション版は、管見の限り活字のものは見つからず)
番外編・「戦国ちょっといい話・悪い話まとめ」
番外編となるが、旧2ちゃんねるの「戦国ちょっといい話」「戦国ちょっと悪い話」スレをまとめていらっしゃるのが、こちらのブログを紹介しよう。私も2012~2015年ころは毎日のように見ており、多くの逸話をここで知った。
スレ民によって今でも毎日多くの逸話が、現代語で分かりやすく紹介されている。
上にあげた「常山奇談」「明良洪範」などからの逸話はすでに出尽くした感があるが、今は地方のマイナーな歴史書から逸話が紹介されており、興味深い。
特に、管理人の方によって武将ごとにタグが付けられているので、武将別の逸話を気軽に検索する手段としてもとても優れている。まとめ管理人さんのご尽力には本当に感謝である。