カート・ヴォネガット『タイタンの妖女』あらすじー人類の究極目的と自由意志とは何か?

NO IMAGE

『タイタンの妖女』の感想を書いたのだが、あらすじが長くなりすぎたのでここで別の投稿として紹介することにした。

「タイタンの妖女」あらすじ

主人公は、マラカイ・コンスタントというアメリカ一の大富豪である。彼は、父の代から続く幸運によって、わずか二代で莫大な富を獲得した人物であった。

 

彼は、とあるウィンストン・ナイルズ・ラムフォードという人物に招待され、彼に会いに行くことになる。

 

ラムフォード氏はかつて億万長者として、自身で宇宙船を建造し、愛犬カザックとともに宇宙旅行へと飛び出した人物である。

だが、彼は宇宙旅行の最中に「時間等極率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)」と呼ばれる特異点に囚われてしまう

この「クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム」については、作中では子供向けの解説しか出てこないが、その機能は次のようなものである。

 

この「漏斗」のある場所には、過去・現在・未来のあらゆる真理が波動として記録されている。この波動は、太陽からベテルギウスに至る一本のらせん状の形をとっている。ラムフォード氏は、それと一体化してしまったのである。

その結果、ラムフォード氏は「波動現象」と化してしまった一方で、未来・過去を知る能力を身に着けることとなる。

 

ラムフォード氏は「らせん型」が地球の位置と一致する際のみ、地球に姿を現すのである。

 

ここで、マラカイ・コンスタントは、ラムフォードから「不愉快な予言」を受けることになる。マラカイ・コンスタントは、この不愉快な予言に絶望し、それが成就しないことを祈りながら酒に浸る。しかし、それが裏目に出て、またついに運にも見放されたことから、マラカイ・コンスタントはラムフォードの予言通り凋落の路を辿る。

 

そんな状況の中、再起を図る彼に歩み寄る影があった。マラカイ・コンスタントは、火星へと誘拐され、火星陸軍の軍人として生きていくことになる。

 

さらに、マラカイ・コンスタントは反抗的な態度をとったこともあって、記憶を何度も抹消されることとなった。そして、彼は「アンク」として火星軍に管理された新たな人生を歩み始める。

 

 

 

火星軍は、地球の侵略を目標とする軍隊である。だが、誰がなぜ地球を侵略するために火星軍を組織したのかは、知る者はいない。

読者なら黒幕を知っている。当然、ラムフォードである。

しかし、彼はなぜ生まれ故郷の地球を攻撃するのか

 

いよいよ火星軍によって地球が侵略される。

しかし、火星軍は地球によってあっさりと倒される。火星軍は旧時代の軍備しか備えていなかったのだから当然である。

ラムフォードは、火星軍を、地球を団結させるために利用したのである。

 

地球の人々は、火星人の襲来という危機を乗り越えて団結した。

また、本来地球人であった、無力な火星人を逆に虐殺してしまったという悔悟の念は、地球人を一つにした。

 

ここに、ラムフォードは新たな宗教の神として君臨する。

 

ここで、アンクことコンスタントは何をしていたのか、という話になる。実は、アンクは火星軍の地球襲撃に参加するも、なぜか水星へと行く羽目になってしまう。彼は水星で何年かを過ごす。

そして、水星での生活を経て、地球へと帰還する。

アンクの着いた地球は、前述のようにラムフォードによる新しい宗教が支配していた。

 

アンクは、ラムフォードに謁見する。そこでラムフォードから、アンクはマラカイ・コンスタントであるということが告げられる

マラカイ・コンスタントとは、新しい宗教が一番の罪人と断罪する存在である。

 

かくして、アンクは流刑として、土星の衛星タイタンへと飛ばされる。

 

タイタンには、サロというトラファマドール星人(実際はロボット)がいた。サロは、宇宙船が故障し、ある部品を紛失したことから、15万年近い足止めをタイタンでくらっていた。

 

ここで読者は知るのである。今までの人類の営みの究極目的とは、サロのいるタイタンに、この部品を届けに行くことなのであった

すなわち、マラカイ・コンスタントらがタイタンへと到着したことで、人類の今までの目標は達成されたのである。

 

ラムフォードも、トラファマドール星人に利用されただけだった。結局のところ、彼が火星と地球の戦争を起こしたのも、織り込み済みのことだったのである。

物語終盤、ラムフォードは、太陽の異常によって「漏斗」のらせんが吹き飛ばされたことによって、太陽系から飛ばされてしまう。

だが、ラムフォードはどこかで存在し続けるのである… ラムフォードこそ最大の悲運の持ち主であったのである。

 

<考察はこちら>

 

▼関連記事