- 2021年3月31日
- 2022年10月18日
カズオ・イシグロ『クララとお日さま』の不気味さ【感想・考察】
カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞してから初の長編小説である『クララとお日さま』が、ついに刊行された。 「AIと少女の交流を描く感動の物語」という触れ込みの本作品だったが、実際に読んでみると、かなり不気味な作品である。「美しい小説」を求めている人より、ミステリーやSFを求めている人にお薦めしたい小説である。 今回は […]
カズオ・イシグロがノーベル文学賞を受賞してから初の長編小説である『クララとお日さま』が、ついに刊行された。 「AIと少女の交流を描く感動の物語」という触れ込みの本作品だったが、実際に読んでみると、かなり不気味な作品である。「美しい小説」を求めている人より、ミステリーやSFを求めている人にお薦めしたい小説である。 今回は […]
小学校高学年の親戚に何か本をプレゼントしようと思った時に、自分が小学生の頃に夢中で読んだ本を思い出した。 フィクションはいろいろあるけど、ノンフィクションも捨てがたい。 自分が一番夢中になって読んだノンフィクションは、NHKの『プロジェクトX』の書籍版である。夜更かしするほどのめり込んで読んだのを覚えている。 それで、 […]
タイトルが秀逸な小説と聞かれて真っ先に思い浮かぶのが、サマセット・モームの『月と六ペンス』という小説だ。 この小説は、パリでの実業家生活ののち画家に転身し、晩年はタヒチで暮らした画家ポール・ゴーギャンをモデルにした小説だ。今回は、この小説について個人的な偏見も交えつつではあるが、紹介していきたい。 『月と六ペンス』あら […]
エドモン・ロスタンの戯曲『シラノ・ド・ベルジュラック』は、男のロマンみたいなところがある。 容姿に恵まれない主人公の恋が実る話だからだ。でも、そんな「ありがちの話」と思ってもらっては、困る。シラノ・ド・ベルジュラックの内面は本当にかっこいいのだ。やっぱり、この作品はものすごい名作だ。 『シラノ・ド・ベルジュラック』あら […]
酒と女と競馬ばっかり描いたチャールズ・ブコウスキーという作家がいる。要するに、くだらない小説をたくさん書いた作家だ。 彼の代表作にして遺作『パルプ』も、そんな小説だ。手持ちのちくま文庫の帯には「最高にサイテーな傑作」と書いてあるが、まさにその通りだろう。 この小説、探偵小説なのだが、主人公はどうしようもなくしょうもない […]
ひさびさにノーベル文学賞作家の作品を紹介したい。 今回紹介するのは、南アフリカの作家J.M.クッツェーの『マイケル・K』だ。 内戦下の南アフリカを舞台にした小説で、やはり日本の小説にはない魅力がある。 『マイケル・K』あらすじ 『マイケル・K』感想・考察 内戦下の南アフリカ マイケルは現代の伯夷・叔斉である 医師から見 […]
第164回芥川賞に輝いた『推し、燃ゆ』(おし、もゆ)を読んだ。 結論から言うと、主人公にあまり共感は出来なかった。だが、主人公に共感できないというのは、小説が面白くないということではない。小説としては「推し」という現代的なテーマを純文学で描いたという点で画期的で、非常に面白かった。 この作品が注目され、芥川賞にも選ばれ […]
ジェイムズ・ジョイスの『若い藝術家の肖像』を読んだ。 最初に正直に感想を書くと、かなり難解であった。もちろん難解さを承知で読む人がほとんどだろうが、海外文学への入門として読むことはあまりおすすめしない。 とはいっても、ジェイムズ・ジョイスの入門としては、ジョイスの代表作である『ユリシーズ』よりも、この『若い芸術家の肖像 […]
恋が始まるには、ほんの少しの希望があれば十分です。 ――スタンダール という引用から始まるマンガ作品があるが、さらに言えばこの言葉はスタンダールの『恋愛論』第三章冒頭からの引用である。 『恋愛論』という本は、恋愛について論じた本としては古典中の古典である。実際読んでみると、共感できる点も多く、自分の感じていた精神現象が […]
ジョージ・オーウェルと言えば監視社会を描いた『一九八四年』が有名だが、オーウェルの出世作である『動物農場』も代表作として知られている。 『動物農場』(Animal Farm)は、副題が「おとぎばなし」(A Fairy Story)であるように、動物たちを主人公としたおとぎばなしである。物語はとても短く、小学生でも「ちょ […]