- 2020年4月22日
- 2022年9月14日
カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』の主人公への違和感【あらすじ・考察】
カズオ・イシグロの最高傑作は? と聞かれたら、この『わたしを離さないで』を推す人は多いのではないだろうか。 私は正直に言うとこの問いには『日の名残り』と答えてしまうのだが、『わたしを離さないで』も名作であることには間違いないし好きな作品である。 だが、『わたしを離さないで』は、どうしても読後に気味の悪さが残る。それはな […]
カズオ・イシグロの最高傑作は? と聞かれたら、この『わたしを離さないで』を推す人は多いのではないだろうか。 私は正直に言うとこの問いには『日の名残り』と答えてしまうのだが、『わたしを離さないで』も名作であることには間違いないし好きな作品である。 だが、『わたしを離さないで』は、どうしても読後に気味の悪さが残る。それはな […]
老人ホーム(宿泊ありのデイサービス)でボランティアをしたことがある。 実の子どもたちもほとんど世話をしに来てくれないようなお年寄りを目の当たりにして、心が痛んだ。ーーそのようなお年寄りの方々も、若いときは人並み以上に子どもに愛情と金銭を注いだはずなのだ。 そのような姿を見て、私はオノレ・ド・バルザック『ゴリオ爺さん』を […]
ライナー・マリア・リルケの『マルテの手記』は、長編小説というよりは詩である。 作家志望だけど売れない青年の、悩みと回想をひたすらに吐露したような作品で、ストーリー性はない。 しかし、ストーリー性がないからといって、その作品が面白くないわけではない。 ともすれば精神を病んでいそうな青年の紡ぐ、美しい言葉の数々に、共感でき […]
小説の主人公というものは、並外れた知性や洞察力の持ち主であることが多い。でも、カズオ・イシグロの『日の名残り』(土屋政雄訳)は、この原則にまったく反する。 「普通の人」が人生の夕暮れに差しかかったときに、ふと自分の人生とは何だったのかを考える。『日の名残り』は、その哀しさを軽妙に描きつつ、また残りの人生の楽しさとは何な […]
20世紀に書かれた最高の英米文学は? というランキングで、たいてい上位に君臨するのは、ジョイスやスタインベックなど日本でも馴染み深い作家の本である。 だが、アメリカ人がこのようなランキングを作成すると、たいてい上位にハーパー・リーの『To Kill A Mockingbird』という本が上位にランクインする(例えば、ラ […]
古典的名作であるシャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』のあらすじについて記す。書評・考察については別記事にまとめているので、そちらを見ていただきたい。 (なお岩波文庫・光文社古典新訳文庫での表記はジェイン・エアだが、この記事ではジェーンに統一する) 「ジェーン・エア」あらすじ 孤児であるジェーン・エアは、不幸な少女時 […]
ハードボイルド小説とは何か? この問いに最も的確に答えてくれる作品は、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』(村上春樹訳。清水俊二氏による旧訳では『長いお別れ』)なのではないかと思う。 私は特にハードボイルド小説を愛好しているというわけではないが、この『ロング・グッドバイ』は、男の友情と哀しい別れの影が付きまと […]
ジェーン・エアといえば、古典的・典型的なシンデレラ・ストーリーと思われている人も多いだろう。 それは一面では誤りではないのだろうが、この古典的名作をそのように表層的にしか読まないというのには個人的には反対である。『ジェーン・エア』は、作品が書かれた当初にどのような意義があり、また現代においてはどのように読むべきなのかを […]
20世紀に書かれた最高のイギリス文学は? というランキングで、たいてい1位に君臨するのが、このジョージ・オーウェル『一九八四年』である。 この作品は、いわゆる「ディストピア小説」である。その後のディストピア小説に大きな影響を与えたのはもちろん、政治思想にも大きな影響を与えている小説である。 今回は、この小説の示唆すると […]
ガブリエル・ガルシア・マルケス「百年の孤独」という作品がある。同名の酒の元ネタである(多分)。 この作品は、「20世紀の傑作」ランキングなどでたいてい上位にランクインする作品(特にこのランキングでは第一位にランキングしている)であり、その価値は広く認められている。私自身もこの作品は非常に好きである。 しかし、一体「どこ […]