フランツフェルディナンド

【2025年来日】Franz ferdinand(フランツ・フェルディナンド)名盤ランキング《唯一無二の踊れるUKロックバンド》

2000年代を代表するスコットランド出身ののバンド、Franz Ferdinand(フランツ・フェルディナンド)。日本でも多くの曲がCMなどで使用され、曲を聞いたことがあるという人も多いかもしれない。2025年12月の来日公演を前に、おすすめのアルバムを紹介したい。

Franz Ferdinandといえば、「女の子たちが踊れるロックを作る」という理想のもとで結成されたグループで、唯一無二のダンサブルなギターロックを奏で続けている。私は彼らのライブを見るのは2025年の来日が初めてになる予定だが、フランツのライブは絶対に楽しい。現代におけるUKロックの最強バンドであるオアシスの再結成公演は素晴らしかったが、東京ドームでのライブということもあり、観客はみんな歌うけれど身体を動かすというライブではなかった。一方、フランツのライブは、観客が身体を動かせるライブだ。

現在、フランツはオリジナルメンバーが2人抜けてしまってはいるが、新メンバーが補充され今でも精力的に新譜も出している。2025年1月にリリースされた最新アルバム『The Human Fear』は、原点回帰のようなアルバムで、健在ぶりを見せつけている。

『The Human Fear』に至るまで、フランツは6枚スタジオアルバムを出しているが、今回は全6枚のアルバムをランキング形式で紹介していきたい

1. Franz Ferdinand (2004)

フランツの最高傑作は、ほとんどのファンがそう考えているだろうが、やはりバンド名を冠したデビューアルバム『Franz Ferdinand』だろう。

当時のメンバーは、フロントマンのアレックス・カプラノス(Alex Kapranos、ボーカル・ギター。名前の通りギリシャ系)、そしてツインボーカルのような役目を果たすこともあるニック・マッカーシー(Nick McCarthy、ギター・キーボード。ドイツ育ちで、初期のフランツの曲にはたまにドイツ語も出てくる。2016年に脱退)、ボブ・ハーディ(Bob Hardy、ベース。現在も在籍中)、ポール・トムソン(Paul Thomson、ドラム。2021年に脱退)の4人。

フランツは2000年代にデビューしたバンドだが、アレックスは遅咲きで1972年生まれ、このアルバムを出した当時は32歳だった。意外にも、オアシスのリアム・ギャラガーと同じである(なんなら、アレックスは早生まれなので学年的にはリアムの1個上である)。

バンドの歴史について触れると、デビューシングル「Darts of Pleasure」でインディーロックファンの注目を集め、続く「Take Me Out」で全英3位の大ヒットを記録し、一躍スターダムを駆け上がる。

この2曲もデビューアルバムに含まれているが、このアルバムはそのほかの曲もすべて素晴らしい、捨て曲なしの名盤である。どの曲も一度聞けばサビは印象に残るキャッチーさで、「ダンサブルなロック」という括りでは他に比肩する作品のない史上最高のアルバムであると断言できる。

代表曲「Take Me Out」はフランツを象徴する曲で、イントロの鋭いギターリフとメロディアスなサウンドから一転、テンポが落ちて踊りたくなるようなリズムへと変わる。アレックスはバースとサビの間をどう繋げたらいいか悩み、最終的にすべてのバースを前に持ってきて、この印象的な構成になったという。(ちなみに「Take Me Out」で私が一番素晴らしいと思うのは、サビよりもむしろバースのメロディ美しさである)

この曲の幻影を追ってか、フランツはその後も途中でテンポが変わる曲ばかり出すようになるのだが、その原点にして頂点と言えるのがこの曲である。

捨て曲がゼロなので名曲を挙げればキリがないが、個人的に一番好きなのは「The Dark of the Matinée」、その次は「This Fire」。美しいメロディも、飛び跳ねたくなるダンサブルさも兼ね備えた名曲である。このアルバムを聴いたことがないという方は、ぜひ聴いてみて欲しい。

2. Tonight (2009)

個人的には、その次におすすめのアルバムとして、3作目の『Tonight』を挙げたい。

前作がデビューアルバムからほとんど間をおかずに制作されたのに対し(2ndアルバムの評価については後述する)、このアルバムは2007年から作曲を開始という、やや時間をかけて作られた作品になっている。

このアルバムを2位に推したのは、本作がバンドの進化を示しているからである。もちろん、1stや2ndが好きだったリスナーの中には、「変わってしまった」と否定的な評価をする人も多いかもしれないが、私としてはかなりおすすめしたいアルバム。

「Ulysses」は、このアルバムの最初を飾る曲でリードシングルでもある。ジャズのような感じもあり、ファジーな感じもある、フランツの新しい方向性を示す楽曲となった。1st、2ndアルバムの曲の歌詞はわかりやすい(悪く言えばバカっぽい)のに対し、この曲は歌詞も難解。この曲はギリシャ神話に登場するユリシーズ(=オデュッセウス。神の呪いを受けて長年さまよった英雄が故郷に帰還するまでを描いた叙事詩が『オデュッセイア』)を引き合いに出し、“元いた場所”に帰れないことを歌っている曲……だと思いますが、どう解釈すればいいのかは英語圏でも見解が分かれているよう。

ほかにも「No You Girls」は、キャッチーなメロディと手拍子の効いたリズムが印象的な楽曲。このアルバムの中でも特にポップな一曲で、前作・前々作を想起させるが、どこか「大人なサウンド」になっている

ちなみに、このアルバムの楽曲をダブ・バージョンにリミックスした『Blood』というアルバムもあり、サブスクなどでも聞くことができる。

3. The Human Fear (2025)

次に紹介したいのは、2025年1月にリリースされた最新アルバム『The Human Fear』である。

このアルバムは2021年にオリジナルメンバーのポール・トムソンがバンドを友好的に離脱し、女性ドラマーのオードリー・タイト(Audrey Tait)が参加してから初めてのスタジオアルバムだが、この幕開けは非常に上手くいったと評価できると思う。

このアルバムは、2013年の『Right Thoughts, Right Words, Right Action』でも組んだプロデューサーであるマーク・ラルフを迎え、「原点回帰」のアルバムである。

アルバムのオープニングを飾る楽曲で、先行シングルとしても発表された「Audacious」は、例の如く…というか、「Take Me Out」のように途中でテンポが落ちる曲である(だが、途中でダンスサウンドになるのではなく、途中でバラードになる)。「臆病にならないで!(Don’t stop feeling audacious!)」というメッセージが印象的で、フランツらしい前向きなエネルギーに満ちている。

ほかにも、「Night or Day」「Build It Up」など、印象的な曲が多い(この2曲は特にバンドの初期っぽい曲だと感じた)。

この記事で、私がこのアルバムを3位という高い順位で紹介したのは、やはりダンサブルなロックを奏でるバンドとしてのFranz Ferdinandの帰還がとても嬉しかったからである。フランツはデビューから20年近く経っても魅力的なポップソングを生み出せるバンドである、ということを証明したのがこのアルバムなのである。

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4. You Could Have It So Much Better (2005)

おすすめランキングの順番を考えるにあたって、一番悩んだのが、このセカンドアルバム『You Could Have It So Much Better』をどこに入れるかである。1位がデビューアルバムなのは明らかに確定していて、3rdアルバム以降のおすすめ順位も私の中では決まっていたのだが、セカンドアルバムを2位にするか3位にするか4位にするかを悩んだ末に、4位にしてしまった。先述の通り、最新作を高い順位で紹介したい、という私の気持ちのほうが強くなってしまったからである。

デビューアルバムの成功から1年後に発表されたこのアルバムは、全英1位を獲得し、グラミー賞の最優秀オルタナティブ・アルバム部門にノミネートという実績を持ち、一般的にはフランツの中で2番目に高く評価されているアルバムと言っていいだろう。

この2ndアルバムは1stのキャッチーでポップな要素を基本的に踏襲しながらも、実験的な要素も加えてバラエティに富んだ作品になっている。しかし、勢いで製作された感はあり、どうしても1stアルバムを超えているとは言えないのではないか……という思いはある。いうなれば、B面のコンピレーションのような印象は否めない…ということで3rd、6thよりも下の順位にしてしまった。

このアルバムのリードシングルとして発表され、日本でもCMで使用された「Do You Want To」はバカっぽいほど底抜けに明るい曲で、「Take Me Out」の方向性の集大成的な曲である。一方、エモーショナルな歌詞とキャッチーなコーラスが魅力の「Walk Away」(個人的にはこのアルバムの中で一番好きな曲)は1stアルバムからの進化を示した曲であり、フランツが“一発屋”ではないことを証明した重要な作品である。

番外編. FFS(2015)

ここで番外編として『FFS』というアルバムを紹介したい。このアルバムは、アメリカの伝説的兄弟デュオであるSparks(スパークス)との共作である。

一方、このアルバムのレコーディングはなかなか大変ではあったようで、ニックがバンドを脱退したのはこのアルバムの影響という側面はあるようである。

アルバムとしての好みでいえば、個人的にはこの『FFS』のサウンドはかなり好きである。ぜひ聴いてみて欲しいので、ここで紹介した。ちなみに最新作『The Human Fear』のアルバムジャケットのデザインは『FFS』と似ている気がするが、何か理由があるのだろうか。この2枚のアルバムは、サウンドの方向性はかなり似ていると思う。

スパークスは1974年の「Kimono My House」(50年前のアルバムですが、今なお前衛的な作品なので、聴いたことがない方はぜひ聴いてみてください。私はこのアルバムの1曲目の「This Town Ain’t Big Enough for Both of Us」を聴いたときにいろんな意味で衝撃を受けました)などでも知られる大御所であるが、『FFS』はやや低迷していたスパークスの復活にも一役買ったアルバムでもある。

『FFS』の中で一番の名曲・人気曲は1曲目の「Johnny Delusional」だろうが、日本人に対しては「So Desu Ne」という日本をテーマにした曲もおすすめしたい(サビのコーラスが「そうですね〜」でシュール)。

Hostess Entertainmen

5. Right Thoughts, Right Words, Right Action (2013)

次に紹介したいのは4作目『Right Thoughts, Right Words, Right Action』。『Tonight』から4年ぶりとなった本作は、前作とはまた少し違った毛色のアルバムとなった。

個人的には先述の通り『Tonight』はとても好きなアルバムなのだが、メンバーとしては前作がやや重厚すぎると評価されたことへの反省もあったようで、ポップな作品となった。アレックスは、このアルバムを「バンドの最もポジティブな作品」と表現している。

ちなみに、アルバムタイトルの「Right Thoughts, Right Words, Right Action」(正しい思考、正しい言葉、正しい行動)は、仏教の「八正道」から着想を得たものらしい。

個人的におすすめな曲は「Love Illumination」である。このアルバムを代表する楽曲の一つで、ディスコ・ロックの要素を取り入れた華やかなサウンド。フランツの持つポップセンスが存分に発揮されている。このアルバムは惜しくもオリジナルメンバーでの最後のバンドとしてのアルバムとなってしまったが(オリジナルメンバーが揃うのは先述の『FFS』が最後)、有終の美を飾ったアルバムだと思う。

6. Always Ascending (2018)

最後に紹介するのは、ギターのニックの脱退後初のアルバムとなった『Always Ascending』。バンドの過渡期に製作されたアルバムということで、残念ながら評価は低くなってしまった。現在のフランツも好きだが、やはりギターのニックの脱退は残念だったと思う。

このアルバムでは、従来のギター中心のインディー・ロック・サウンドから、シンセサイザーを多用したディスコ・ロック・サウンドへとシフトしている。アレックスは「新しい色の影を作りたかった」と語っており、既存の要素を組み合わせて、これまで聴いたことのないサウンドを目指したという。

このアルバムについては、リリース当初に聞いたときに「これじゃあAscendingじゃなくてDecsendingだよ……」と少し残念に思ったことを記憶しているが、少し勢いがないのは否めないものの悪いアルバムではない。

個人的な好みで言えば、このアルバムの一番の名曲は「Glimpse of Love」である。

フランツの中では一番おすすめ度が低い作品ではあるのだが、Always Ascending(いつも上昇中)というタイトルをつけるアレックスの前向きさこそ、いまなおフランツが第一線で活躍を続けられている理由であり、このアルバムもバンドの歴史の中の重要な一枚であることは間違いない。

おわりに

ここまでFranz Ferdinandのおすすめアルバムを紹介してきたが、おすすめ順位は以下の通り。

1. Franz Ferdinand (2004)
2. Tonight (2009)
3. The Human Fear (2025)
4. You Could Have It So Much Better (2005)
5. Right Thoughts, Right Words, Right Action (2013)
6. Always Ascending (2018)

※ FFS(2015)も非常におすすめ

ちなみにフランツのベストアルバムとしては、『Hits to the Head』というアルバムがある。このアルバムは単にヒット曲を集めただけでなく、ベストアルバムのための新曲も収録されているのだが、正直な感想を言ってしまうとこれらの曲がフランツというバンドの「ベスト曲」に割って入るかはやや疑問ではある。(ベストアルバムに1stから入れられる曲数は限られるのは仕方ないが、「Jacqueline」や「Come on Home」などの未収録となった1stアルバムの方が名曲度合いは高いよな……という印象)。

個人的には、フランツを初めて聞く人にはまず1stアルバムを聴いて欲しい!というのが率直な感想です。いまなお現役で「常に上昇中」のバンド、フランツ・フェルディナンド。未聴の方はファンになって損はないと思います。

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このブログは管理人が実際に読んだ本や聴いた音楽、見た映像作品について書いています。AI全盛の時代ですが、生身の感想をお届けできればと思っています。