小林道彦『近代日本と軍部 1868-1945』という本が発刊された。さっそく読んだので、感想を記そうと思う。
この本について
この本、第一に言えるのはめちゃくちゃ厚い。
しかし、講談社現代新書は「東京裁判 (講談社現代新書)」とか「改訂新版 新書アフリカ史 (講談社現代新書)」とか「社会学史 (講談社現代新書)」など、普通新書として出すのか?という厚さの本をよく出す。
広いテーマを一冊に収めてくれているのは面白いのだが、たまにその厚さに閉口することもある。
通勤・通学中にちょっと読もうと思ってこの本を紙で買い、その厚さに後悔しても責任はとれませんのであしからず。
しかし、厚さに見合う本ではある。。
この本が新書として珍しいのはその厚さだけでなく、脚注がしっかりしていて引用した研究書などが明記されていることにもある。その点でこの本はしっかりとした学術的な概説書なのである。少ししっかりと日本史を学びたい人には勧められる新書である。
「近代日本と軍部」内容
さて、本題に入っていこう。
この本は、簡潔に言えばその題の通り近代日本(明治維新から太平洋戦争終戦まで)の「軍部」の通史を描いた作品である。
もう少し細かくその内容を見てみよう。amazonなどに掲載されている「商品紹介」から一部を抜き出すと、以下のようになる
「近代理性の象徴」のはずであった組織はなぜ暴走したのか? 明治維新から太平洋戦争敗戦による崩壊まで、一人で描ききった超力作!戦前日本の歴史とはある意味において、相次ぐ戦争の歴史でした。といって、日本が明治維新以来一貫して軍国主義路線を取っていたわけではありません。しかし結果として、後世の目から見るとそうみなさざるを得ないような「事実」の積み重なりがあることも、やはり否定することはできないでしょう。
では、このような「意図」と「結果」との大きな乖離は一体なぜ起こったのでしょうか。
(中略)
本書では、歴史を後付けではなく、極力「リアルタイム」で見ることを目指し、近代日本最大のパラドクスである「軍部」の存在の謎に迫ります。(強調引用者)
確かにこの本は前述の通り新書としてはめちゃくちゃ厚いのだが、「軍部の全て」を網羅しているわけではない。
この本は、軍部(陸軍)と、政治との関係性をテーマとしている。例えば、「近代日本の軍部」の歴史であるからと言って、戦術や武器などについて述べられている本ではないということは断っておこう。
しかし、そのような軍部と政治の関係を描くことによって、著者は何を伝えたかったのだろうか、というのが問題となる。
この本のテーマは何なのか
優れた新書や研究書というものには、一貫したテーマというものがある。
このテーマというのが、先ほど引用して強調した部分にあるのではないかと、私は思う。
明治憲法体制の改正が唯一可能だったのは、その起草者である伊藤が憲法改革に取り組もうとし、また軍部自体もその必要性を認めていた日清戦争後の時期しかなかったということです。
しかし日露戦争での奇跡的な勝利により、この改革への機運は急速にしぼんでしまいました。
この本をどう読むべきか
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