Radiohead(レディオヘッド)が7年ぶりにツアー活動を再開した。とはいえ、バンド内にはわだかまりもある状態だといい、日本まで公演をしにきてくれるのかわからないが来日も期待したい。
ここで、個人的にレディオヘッドの「最高の曲」だと思う曲について紹介したい。
音楽史的なレディオヘッドの不朽の名曲といえば、「Creep」をはじめ、「High and Dry」「Fake Plastic Trees」「Paranoid Android」「Karma Police」などになるだろう。
しかし、ここであえてそういった“王道の曲”以外の中から最高の曲を選ぶとしたら、「Polyethylene(Parts 1 & 2)」(ポリエチレン パート1&2)という曲を挙げたい。
レディオヘッドのファンなら「Polyethylene」という曲のことを知っている人も多いと思うが、この曲はオリジナルアルバムには収録されていない曲であり、その意味で“隠された名曲”である。今回は、私がなぜこの曲がRadioheadの最高傑作(の一つ)だと思うのか、その理由について書いていきたい。
「Polyethylene(Parts 1 & 2)」とはどのような曲か
「Paranoid Android」 のB面曲
改めてになるが、「Polyethylene」という曲は、レディオヘッドのB面曲であり、先述したレディオヘッドの代表曲である「Paranoid Android」(パラノイド・アンドロイド)のシングルに収録されている。
「Paranoid Android」は、レディオヘッドの名盤『OK Computer』に収録された曲であり、つまり「Polyethylene」は、『OKコンピューター』には収録されなかった曲ということになる。
ここで、レディオヘッドというバンドの音楽的な変遷について簡潔に説明したい。
レディオヘッドはファーストアルバム「Pablo Honey」と続く「The Bends」ではギターロックバンドだったが、3rdアルバムの『OK Computer』ではギターサウンドを残しつつも映画音楽やトリップホップ、現代音楽に接近し、音楽史に残る名盤を創り上げた。また、4th、5thアルバムの『Kid A』『Amnesiac』はほぼ同時期にレコーディングされたが、前者ではエレクトロニカに、後者ではジャズに接近する。6thアルバムの『Hail to The Thief』ではややバンドサウンドに回帰するが、続く『In Rainbows』では再びエレクトロニカに、『The King of Limbs』ではアンビエント、最新作『A Moon Shaped Pool』ではクラシックの影響もみてとれるようになる。
Radioheadの2つの特徴
簡潔に言えば、レディオヘッドというバンドには、大きく分けて2つの特徴があるといえるだろう。
一つは、初期の『The Bends』や『Pablo Honey』の頃の、(内省的で暗い側面は大いにあるが)繊細なメロディアスさを持ちつつも力強いギターサウンドを奏でるロックバンドとしてのレディオヘッド。もう一つは、『Kid A』以降の、現代音楽などのあらゆる音楽の要素を取り入れ、ロックバンドという枠を飛び越えた“現代の音楽シーンにおける巨人”としてのレディオヘッドである。
そして、その中間点に位置するのが、ギターロックバンドとしてのサウンドを残しつつ、様々な実験的な要素を取り入れた『OKコンピューター』なのである。
これは個人的な意見だが、やはりレディオヘッドというバンドの最高傑作は『OKコンピューター』だろう。『OKコンピューター』が名盤である理由は、ロックバンドの瑞々しさを残しながら、彼らにしかできない音楽を打ち立てたという、二つの要素を両立させていることにある。
ここで本題に戻り「Polyethylene」という曲についてみると、この曲はサウンドとしては『The Bends』と『OKコンピューター』という2つのアルバムの中間)に位置する曲である。いわばバンドの過渡期にある曲である。
過渡期の曲ということもあり、「Polyethylene」という曲は、完成度としては、少し“不完全さ”も残っている曲であると言えると思う。しかし私は、その点もこの曲の素晴らしい部分だと思っている。
なぜ「Polyethylene」がRadioheadの最高傑作なのか
前置きが長くなったが、ここから「Polyethylene」という曲について紹介したい。
YouTubeの公式でもアップロードされているので、聴いたことがない方はぜひ一度聞いてほしいと思う。
二部構成という特徴
この曲はタイトルにある通り、この曲は「Part 1」と「Part 2」という二つの部分から構成されている。
Part 1は、「Go」という掛け声とともに始まる美しく繊細なアコースティックギターとトム・ヨークのボーカルのみで構成されており、40秒ほどと非常に短い。「1,2,3,4」の掛け声とともにPart 2に入る。Part2は、「The Bends」収録曲のような、力強いギターとトム・ヨークのボーカルが特徴である。
この「Polyethylene」という曲の二部構成こそ、レディオヘッドというバンドの魅力を象徴していると私は思う。
「Part1」の繊細で文学的な美しさ、「Part2」の力強さは、先述したようなロックバンドという垣根を飛び越えたレディオヘッドに加えてギターロックバンドとしてのレディオヘッドという2つの魅力を体現していると思うのだ。ただ、ひとつ留保するとすれば、「Part1」はサウンドとしてはアコースティックギターのみなので、サウンド的には実験的とはいえないかもしれない。しかし、曲の前半と後半で違う作りになっているという構成そのものもレディオヘッドというバンドの実験的な側面を象徴しているということはできるだろう。そしてどちらのパートも儚く美しい。
『The Bends』の頃のギターロックバンドとしての魅力を色濃く残しながらも、『OK Computer』以降の実験的な音楽の萌芽も見ることができる名曲が、「Polyethylene」なのである。
歌詞の魅力
レディオヘッドというバンドはトム・ヨークの抽象的な歌詞も魅力だが、「Polyethylene」も例に漏れない。実は、この曲の歌詞を書いたときのことはトム・ヨーク本人も思い出せないらしいのだが……それもまた歌詞を考察する上での魅力かもしれない。
Part1は比較的わかりやすい恋人に向けた歌詞だが、Part2では曲の題名である「ポリエチレン」が登場。
So sell your suit and tie and come and live with me
Leukemia schizophrenia polyethylene
There is no significant risk to your healthスーツとネクタイを売って 僕と一緒に暮らそうよ
白血病、統合失調症、ポリエチレン 健康に重大なリスクはない
この歌詞の続きが気になる方はぜひ調べていただきたい。
おわりに
Radioheadというバンドは、アルバム収録曲だけでなく、B面曲やレアなトラックにも傑作が数多く存在する。「Polyethylene」同様に「Paranoid Android」のB面に収録された「Pearly*」も名曲であり、もちろん他のB面曲も(特にこの時期は)名曲揃いであるので、ぜひオリジナルアルバム以外も聴いてみてほしい。
いまさらになるが、個人的なこの曲との出会いとしては、『OKコンピューター(コレクターズ・エディション)』のDisk2の1曲目に収録されていたのを聴いたことであった。その時に衝撃を受け、なぜこの曲が『OKコンピューター』のオリジナルアルバムに収録されなかったのか本気で不思議に思った。
ただ、考えてみるとこの曲の特徴的な構成のせい(特に、Part1があまりに繊細過ぎる)で、この曲をアルバムの途中に配置するのはかなり難しかったのかなとも思うようになった。また、「Polyethylene」という曲はサウンドとしてはどちらかというと『OKコンピューター』より『The Bends』に近いということもあり、全体のバランスとして「Polyethylene」が『OKコンピューター』に収録されなかったのだろうと納得している。
だが、やはり曲単体で見たときに、「Polyethylene」という曲は、『OKコンピューター』に収録された曲に劣らない魅力を持っていると思うし、レディオヘッドの“隠された名曲”として一番おすすめしたい曲である。
ちなみに、2017年に『OKコンピューター』の決定版である『OK Computer OKNOTOK 1997-2017』が発売されており、現在「Polyethylene」を聴くのであれば、このアルバムをサブスクやCDで聴くのが一番おすすめである。
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