アメリカ文学の代表的おすすめ作家《実際に面白かった小説紹介・特徴解説》

村上春樹とアメリカ文学

ちなみにマッカラーズは、ほんの数年前までは日本でも限られた読書好きにしか知られていなかった名前ではないかと思うが、村上春樹が『心は孤独な狩人』を訳出したことにより以前よりは有名になった(のではないかと思っている)。

良くも悪くも、戦間期から戦後のアメリカ文学を日本で読む場合、村上春樹は避けて通ることができない。村上春樹の翻訳や言及により、多くのアメリカ作家が日本の読者に紹介され、再評価されることになった。

リチャード・ブローティガン

村上春樹が影響を受けたとされるアメリカの小説家としては、そして1960年代のカウンターカルチャーを代表する作家と評されるリチャード・ブローティガン(Richard Brautigan, 1935-1984などが挙げられる。

代表作『西瓜糖の日々』(1968年)では、ユートピア的な共同体を舞台に、愛と死をテーマにした幻想的な物語を展開した。これらの作品は、従来の小説の形式を破った断片的な構成と詩的な文体で知られている。

J.D.サリンジャー

また村上春樹自身が訳を手掛けた作家としてもっとも有名なのはJ.D.サリンジャー(J.D. Salinger, 1919-2010だろう。『ライ麦畑でつかまえて』(1951年)は、現代でも共感する人も多い1950年代の青春文学の象徴的であるる。

『ライ麦畑でつかまえて』(キャッチャー・イン・ザ・ライ)についてはあまり説明はいらない気がするが、プレップスクールを退学になった16歳の少年ホールデンの一人称で語られる小説であり、大人社会の偽善に対する青年の反発と、純粋さを失うことへの恐怖を鋭く描き出している。ほかにサリンジャーの作品として『フラニーとズーイ』や、有名な「バナナフィッシュにうってつけの日」が収録されている短編集『ナイン・ストーリーズ』などがある。

ジョン・アーヴィング

ほかに村上春樹が翻訳を出している作家としては、第一作の『熊を放つ』を村上春樹が訳しているジョン・アーヴィング(John Irving, 1942- が挙げられる。

アーヴィングは「19世紀以来の物語の復権」をテーマにした作家であり、実験的なポストモダニズム作品などに反対する立場をとり、力強い物語を創出している。読むのにかなりカロリーを使うので、筆者は『ホテル・ニューハンプシャー』しか読了したことがないのだが、ほかにも『ガープの世界』などの代表作がある。

ポール・オースター

アーヴィングの同世代の作家として挙げられるのが、ポール・オースター(Paul Auster, 1947-2024)であり、村上春樹も天才と評したという作家である。

オースターは実験的な作風で知られ、アーヴィングと違って非常に軽妙でおしゃれな小説を書く。代表作は「ニューヨーク三部作」と呼ばれる『ガラスの街』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』と、『ムーン・パレス』だろうか。近いうちに記事を書いて追記したい。

チャールズ・ブコウスキー

また、村上春樹は翻訳していないが、村上春樹の盟友というべき翻訳家の柴田元幸が多くの名訳を出しているのが、チャールズ・ブコウスキー(Charles Bukowski, 1920-1994)である。

酒と競馬と女性を愛した無頼派で、柴田元幸はブコウスキーと初期の村上春樹には相似する点があると言っている(村上春樹は認めないかもしれないが)。代表作『パルプ』は異色の作品であるが、私の生涯でも最も好きな小説の一つである。ブコウスキー作品の中にはあまり面白くないものもあるが、まさにハマる人にはハマる、カルト作家と言える存在である。

『パルプ』紹介

酒と女と競馬ばっかり描いたチャールズ・ブコウスキーという作家がいる。要するに、くだらない小説をたくさん書いた作家だ。彼の代表作にして遺作『パルプ』も、そんな小説だ。手持ちのちくま文庫の帯には「最高にサイテーな傑作」と書いてあるが、まさに[…]

パルプ

アメリカSFの隆盛

一方、村上春樹から離れてアメリカ文学を見てみると、やはり科学技術大国ならではのSFはアメリカ文学の特徴といえるだろう。

ヒューゴ―賞に象徴されるように、やはり世界一のSF大国はアメリカだと思う。アメリカ出身のSF作家としては次のような人物がいる。

レイ・ブラッドベリ

1954年にヒューゴ―賞を受賞した『華氏451度』などの著作があるレイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury, 1920-2012)も重要な作家である。『華氏451度』とは本が燃える温度を指し、書物が焼かれる世界を描いたディストピア小説の古典と称される。

『華氏451度』紹介

大袈裟な飛躍かもしれないが、図書館の廃止のニュースを見ると、人類の歴史の中で権力者によって本が弾圧されてきたことを連想する。秦の始皇帝は焚書坑儒として本を焼いて思想家を生き埋めにし、ナチス・ドイツも本を焼いてきた。本を焼くという行為は、自国[…]

華氏451度

ダニエル・キイス

『アルジャーノンに花束を』(1966年)という有名な著作があるダニエル・キイス(Daniel Keyes, 1927-2014)もここでは紹介したい。

『アルジャーノンに花束を』は、知的障害を持つ主人公チャーリィが、急に高い知能を得てーーという話だが、この話を読んで心が温まる人もいれば、心がうすら寒くなる人もいるという、感想が二分される小説といわれる(私はあまり心温まらなかった方である)。しばしばインターネット上の”教養”とされることもある小説で、読んだことのない方は興味があればぜひ読んでみてほしい。

『アルジャーノンに花束を』紹介

ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』といえば、「知能を高めることが幸福なのか?」といった「幸福」について問うているSF作品としてや、ラストの場面に感動する心温まる作品として、また文学的には、主人公の「手記」という形をとることで、主人[…]

アルジャーノンに花束を

フィリップ・K・ディック

ほかにSFの大家として知られる小説家として、『高い城の男』(1962年)や『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968年)、などが有名なフィリップ・K・ディック(Philip K. Dick, 1928-1982)がいる。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は小説のタイトルも有名だろうが、映画『ブレードランナー』の原作としても知られる。

今読んでも全く古くない、とは言いにくいところもあるが、SFの古典としてSF好きの方にはぜひ読んでみてほしい。

『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』紹介

フィリップ・K・ディックの小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、1968年に刊行されたディストピアSFの傑作で、映画『ブレードランナー』の原作(というよりは原案)としても知られている。だが、この作品は、その題名は非常によく知[…]

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カート・ヴォネガット

またSFと純文学の融合とでもいうべき不思議な作品を残した作家として、カート・ヴォネガット(Kurt Vonnegut, 1922-2007)が挙げられる。

日本で一番有名なヴォネガットの作品は『タイタンの妖女』だろうか。この作品は爆笑問題・太田光のお気に入りとしても知られ、芸能事務所タイタンの名前の由来になった小説である。またヴォネガットは『スローターハウス5』で、第二次世界大戦のドレスデン爆撃を体験した主人公の時空を超えた体験を描き、戦争の不条理さをSFという手法で描いた小説家でもある。

ヴォネガットの作品は、純粋なSFではない。しかしSFのような形式を用いることで、独自の小説世界を作り出した唯一無二の小説家であり、興味を持った方はぜひ読んでみてほしい。

『タイタンの妖女』紹介

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紹介できなかったアメリカ文学たち

ここまで偉そうにアメリカ文学の歴史を通史的に語ってきたが、この記事は私が実際に読んだ小説(一部読めていない小説も含んだが)を通史的に紹介しているだけなので、私が読んでいない小説は紹介できていない。

ソローなどの古典的な作家、スタインベックなどの20世紀を代表する作家、ピンチョンといった現代を代表する作家や、スティーブン・キングなどの小説については触れられていないが、一人の読書好きの感想として、参考にしていただけたら幸いです。

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