死後40年、イアン・カーティスを想う

「27クラブ」という言葉がある

――このクラブの「会員」は、27歳で死亡したポピュラー音楽のミュージシャンたちである。ニルヴァーナのカート・コベイン(カート・コバーン)やジャニス・ジョプリンなどが主要メンバーである。最近ではエイミー・ワインハウスも「27クラブ」入りを果たしてしまった。

彼らの存在から、欧米ではミュージシャンは27歳で死亡することが多いと、まことしやかに言われている。

最近亡くなったアヴィーチー(享年28)やマック・ミラー(享年26)も27歳前後で命を落としており、「27」が呪われた数字というわけではないようだが、このあたりの年齢で亡くなるミュージシャンは今でも多い。

27歳前後で人生を終えてしまうほど、ミュージシャンというものは苦悩に喘ぎ、時には快楽におぼれ、燃え尽きてしまうということなのだろうか。

しかし「27クラブ」にも上には上(?)がいて、もっと若くして亡くなっていながら、彼らに勝るとも劣らない名声を残しているミュージシャンもいる。

その代表格が、イアン・カーティス(1956年7月15日~1980年5月18日)ではないかと思う。今日(この記事を投稿した2020年5月18日)は、イアンが亡くなってからちょうど40年の節目の日である。

イアンカーティス
New Order来日公演時に映し出されたイアン・カーティス ©不眠の子守唄

Joy Divisionというバンド

イアン・カーティスというのは、Joy Division(ジョイ・ディヴィジョン)のボーカルを務めた人物である。

聴いたことがない方には、まず遺作にして代表曲、Love Will Tear Us Apartを聴いてほしい。


Joy Division – Love Will Tear Us Apart [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

この曲を聴いて、かなり「変な曲」だと思われた方も多いかもしれない。無機質なドラムや上手いとは言いがたいギター。

そして、イアン・カーティスの重いバリトンボイス。

彼のボーカルも技術的には決して上手くないのだろうが、不思議と演奏に調和をもたらしている。

イアン・カーティスの歌詞

サウンドも独特ではあるのだが、このバンドの楽曲で一番特徴的なのは、歌詞の暗さなだと思う。

先ほど紹介した「Love Will Tear Us Apart」では、表題の通り

愛がまた私たちを切り裂く

と歌われる曲である。

他に私が個人的に一番好きな曲である「The Eternal」という曲は、最も暗い曲の一つとされるが、次のような歌詞がある。

人と心を通わせることを、呪いのように受け止めてしまっていた

どうしたらこのような歌詞が書けるのか不思議に思うほどの、内省的な言葉だ。

このような歌詞には、作詞したボーカルのイアン・カーティスの精神が表れている。

イアン・カーティスという人物

イアン・カーティスという人物は、非常に両面的であったと言われている。

彼は公務員として障碍者のための職業安定所で働き、安定した生活をする一方、ハードな音楽活動をこなしていた(障害や病気を持った人々との触れ合いは、彼の歌詞にも大きな影響を与えている)。

イアンはロックスターとしての野心とプレッシャーの狭間や、妻と愛人との三角関係、そして持病のてんかんや鬱とハードなスケジュールに苦しんでいた。

(イアン・カーティスと言えば、見ているものを不安にさせるダンス(?)も有名である。この不思議なダンスは、てんかんの前駆症状だともいわれている)


Joy Division – Transmission [OFFICIAL MUSIC VIDEO]

そのような両面性が、彼を苦しませた。

そして、彼は遺作となったJoy Divisionの2ndアルバム「Closer」の発売間際に、自ら命を絶った。

英語の「Closer」には「クローサー」(もっと近くに)と「クローザー」(終わらせるもの)の二通りの意味がある。

――ふつう日本では「クローサー」と呼ばれているが、ダブルミーニングなのである。

生前のイアン・カーティスは、どのような意図でこの題を付けたのだろうか? 想像は尽きない。

おわりに

私もイアン・カーティスがJoy Divisionの1stアルバムであるUnknown Pleasuresを書いた年より年上になってしまった。

しかし、彼と比べてどれくらい濃密な人生を歩んできたのだろうかと思うのである。

イアン・カーティスのようになりたい、というわけではない。しかし、やはり彼のような生き方にどこか憧れ、感化されてしまうのである。

なお、イアン・カーティスの死後、残されたメンバーが結成したバンドが「New Order(ニュー・オーダー)」である。彼らはイアンの訃報を聞いた日のことを歌った「Blue Monday(ブルー・マンデー)」でヒットを記録し、スターダムに駆け上がることになるのだ。


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