『信長公記』で戦国大河ドラマの復習をするー「麒麟が来る」を観て思う

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大河ドラマ『麒麟が来る』を観ている。録画して見ているので若干流れに乗り遅れている感があるが、長良川の戦いで斎藤道三が高政(義龍)に討たれるのをようやく見終わったところである。

 

ところで大河ドラマの楽しみ方は色々あると思うが、私はいつも大河ドラマを、史実(ないし逸話)をどのように潤色して物語を作り上げているのだろうか? という観点から楽しんでいる。これは今回の『麒麟が来る』以外の大河ドラマにも言えることである。

そのような「どこを潤色しているのだろう?」という発見を楽しむことは、その話の元となった史実や逸話を読むことによって可能になる。

戦国大河を観る場合に、そのような本としておすすめなのは『信長公記』である。この記事では『信長公記』について紹介し、またこのような大河ドラマの楽しみ方についても提示したい。

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」オリジナル・サウンドトラック Vol.1

『信長公記』とは?

書名:『信長公記』(しんちょうこうき)

著者:太田牛一(おおたぎゅういち/うしかず)

成立年代:江戸時代初期

『信長公記』は、名前の通り織田信長の一代記であり、信長の幼少時代から本能寺の変までが書かれている

書かれたのは江戸時代初期(1603年~1610年くらいの間か)と言われているが、著者が信長に仕えていた時代の書き置きも使用されており、同時代に成立した一級資料としての性格も持っている。

内容すべてが史実通りというわけにはいかないが、歴史研究上でも非常に重視されている書物である。

 

著者の太田牛一は、信長に直臣として使え京都の行政も行った人物。太田牛一はそのような経歴から文官のイメージが強いが、弓の名手だったことでも知られている(もともと柴田勝家の家臣だったが、弓の腕を買われて信長の直臣になったという)。

そのような逸話を反映して太閤立志伝Vというゲームでは「弓の使い手」としてめちゃくちゃ個人戦が強く、こてんぱんにやられた。

moriishi.com


 
 

『信長公記』の面白さ 

実際に『信長公記』を読んでみると、やはり信長の伝記として面白さを持っている。

単体でも面白いが、文学作品のように読むには物足りなさがあるだろう(しかし淡々と事実が述べられているため、すらすら読めるというメリットはある)。

 

そう考えると、『信長公記』の一番の楽しみ方は、やはり記事冒頭でも述べたように大河ドラマや歴史小説と比較しながら読んでいくということになるのではないかと思うのである。

『信長公記』の斎藤道三の最期

では、『信長公記』で斎藤道三がどのように描かれているのかを、読み解いて見よう。

大河ドラマ『麒麟が来る』を観ている方は、大河ドラマでの対応するシーンを思い浮かべながら読んでみてほしい。

(4月18日)斎藤道三と義龍は対立し、道三の婿である信長も道三のために陣を出した。

(4月20日)新九郎義龍は軍勢を出し、道三も鶴山を下り、長良川まで軍勢を出した。……義龍の軍の中から長井忠左衛門は道三と渡り合い、太刀を押し上げて「むず」と組みつき、斎藤道三山城守を生け捕ろうというところに、荒武者の小真木源太というものは走り来て、道三を薙ぎ臥せて首をとった。忠左衛門は後の証拠のために道三の鼻をそいで退いた。

合戦は義龍側の勝ちに終わり、首実検のところへ道三の首が持ってこられた。

この時、身より出た罪であると義龍は感じ、得度(出家)をした。これより後、新九郎は「はんか」と名乗った。

昔中国で「はんか」と言うものが親の首を切って孝としたことがあった。

しかし今の新九郎義龍は、不孝重罪恥辱であるのである。

(筆者が国立国会図書館所蔵の刊本をもとに抄訳)

――大河ドラマ『麒麟が来る』でも、義龍と道三が向き合う場面があったが、もちろんこれは創作である。

 

しかし、やはり義龍が父・道三を討ったことによって不孝者になったということなどは、同時代から言われていたことである。

当然であるが、大河ドラマのストーリーとも重なることはわかるだろう。


 
 

おわりに

以上に挙げた例などからもわかるように、戦国時代(かつ織田信長の周辺)を題材にした創作物は、基本的に『信長公記』をもとにしている。

 

例えば大河ドラマの復習などに、この『信長公記』を読んでみてはいかがだろうか、ということを提案したい。

『信長公記』現代語訳を読み放題で読む

『信長公記』現代語訳は、入手のしやすさなどに鑑みて、以下のKADOKAWAの新人物文庫版がお薦めである。

現代語訳 信長公記 (新人物文庫)

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こちらの『信長公記』の現代語訳は、Kindle Unlimited(キンドルアンリミテッド)という定額読み放題サービスで読めるので(記事投稿日時点)、こちらのサービスも合わせてお薦めしておきたい。初月無料なので、まだこのサービスを使ったことがない方は実質無料で試し読みできることになる。

KindleはスマホやPCのアプリでも読むことができるので、体験したことがない方は一度試してみてはいかがだろうか。

『信長公記』原文を無料で読む

ご存知の方もいらっしゃると思うが、戦前の書物などは国立国会図書館デジタルコレクションというサービスで無料で読むことができる

 

「原文が読みたい」という物好きな方は、こちらの国立国会図書館デジタルコレクションがお薦めであるが、家臣などの名前が通称で記されていてよくわからない(例:織田信忠(信長の嫡男)の名前が「織田菅九郎」と書かれているなどする)ので、よほどの戦国マニア・古文マニア以外にはあまりお薦めしないが、現代語訳で訳出されていない瑣末な事案も見たいならばこれを読むのがいいだろう。

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