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徹底解説!新書のレーベルごとの特徴まとめ【新書とは?】

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◆この記事は◆各出版社から刊行されている「新書」について、8つのレーベルを取り上げてその特徴をご紹介します。

 

「新書」とは何か、ご存じでしょうか。

 

「新書」という言葉には「新しい書物」を指す場合もありますが、ここでいう「新書」とは「新書判」(約173×105mm)と呼ばれるサイズの本のことを指します。

いわゆる「文庫本」よりも少し大きめのサイズです。文庫本より大きいとはいえ、一般的な単行本とは違って片手で持ちやすい大きさです。

 

多くの出版社が新書を出していますが、新書全体の特徴としては、研究者が書いている歴史や哲学に関する本といったような学術・教養新書や、時事・社会問題などのテーマや、あるいはビジネスマンのための実用書など、広義のノンフィクションを扱った本です。小説などのフィクションが新書から出されることは、ほとんどありません。

 

つまり、なにか知識を得たいと考えている大学生や社会人のような人々が、新書のターゲットです。

しかし、新書はそれぞれの出版社のレーベルごとに特徴も違いますので、ここでは新書のレーベルごとの特徴について解説していきます。新書を読み始めようとしている方、また新しい新書を探している方は、ぜひ参考にしてみてください。

 
 

教養新書系

各社の新書レーベルを紹介するにあたって、ここでは「教養新書」と「実用新書」という2つに分類して紹介を行おうと思います。

新書の目的の一つは、研究者の学術的な研究成果をわかりやすく広めるということが挙げられます。研究者は通常大学などの研究機関に属して研究を進め、学術雑誌に学術論文を掲載するという形で成果を発表していますが、そのような論文に一般の人がアクセスするのは大変面倒です。そのため、学術研究の成果を多くの人に知ってもらうために、新書が書き下ろされます。

こうして学術的な成果など教養的なことをテーマにしたのが、「教養新書」です。

「教養新書」に力を入れているレーベルとしては、岩波新書、中公新書、講談社現代新書、ちくま新書があると言えますが、ここではそれぞれのレーベルの特徴について紹介します。

岩波新書

教養新書の中でも最も「教養的」なのは、岩波新書です。

岩波新書は日本で最初の新書(創刊は1938年)であり、最も歴史ある新書です。見た目の特徴としては「新赤版」と呼ばれる赤い装丁で、いかにも格式高そうです

伝統と格式高そうな見た目にたがわず、学術的成果を重視した研究者による骨のある本が多いです。ただ、格調高さは裏を返せば読みにくさにも通じるため、「新書初心者」にはおすすめしにくいというのが正直なところかもしれません。もちろん読みやすい新書もたくさんありますが。

岩波新書は様々な教養新書を出していますが、「シリーズ日本近現代史」「シリーズ 中国近現代史」といったシリーズものや、「〇〇10講」といったテーマ別の概説形式の新書などがあるのが特徴かと思います。

どれも基本的に大学教授などを勤める研究者が書いており、内容が難しい場合もありますが、学術的に信頼できる新書です。「教養新書」を読みたい方は、ぜひ興味のあるタイトルの岩波新書を手に取ってみてください。『岩波新書解説総目録』という本(有料)もあります。

最近だと、Twitterを見る限り『英語独習法』という本が売れている印象です。著者の今井むつみ先生は言語心理学を専門とする慶應義塾大学の先生ですが、実用的な「英語学習」を取り扱ったことがヒットの理由でしょうか。

ちなみに1938~1949年に刊行されたものは現在と同様に赤いですがデザインが若干異なるので「旧赤版」、1949~1977年に刊行されたものは装丁が緑色なので「青版」、1977~1988年に刊行されたものは装丁が黄色なので「黄版」と呼ばれています。

日本の戦後社会に大きな影響を与えた歴史的名著であるところの、丸山真男の『日本の思想』などは「青版」ですね。

中公新書

「教養新書」として岩波新書と双璧をなすのが深緑の装丁の中公新書です。

中公新書の内容面での特徴としては、歴史系に強いことが一番の特徴といえます。最近の新刊を見ても、半分以上が歴史をテーマにした新書で、このところ一層歴史系に注力している印象があります。「歴史系新書といえば中公新書」ですね。

中公新書も岩波新書と同様、学術的な成果に基づいた研究者による新書が多いです(印象論ですが、岩波新書より中公新書の方が若手研究者の起用が多い印象があります)。

そのため、多くの中公新書は学術的に信頼できます。たとえば山室信一先生の『キメラ 満洲国の肖像』という本は、満洲国について大学でレポートを書いたり研究するのであれば、真っ先に参照されるべき研究です。

もっとも、岩波新書と同様に学術価値の高さは読みにくさに通じることもありますが、ぜひ興味のあるテーマの中公新書があれば読んでみてください。

もちろん中公新書も歴史系ばかりというわけではなく、たとえばロングセラーには『ゾウの時間 ネズミの時間』などがあります。

なお中央公論新社からは、中公新書ラクレという新書レーベルも出されています。「ラクレ」は、中公新書よりもリアルタイムな話題を取り扱った時事的な内容や、たとえばアニソン歌手の影山ヒロノブさんの『ゴールをぶっ壊せ』のような従来的な教養に属さないような新書が出されています。

 
 

ちくま新書

ちくま新書は岩波新書や中公新書よりも歴史がかなり浅いですが、岩波・中公同様に骨のある「教養新書」を出しています。

最近では『世界哲学史 全8巻』『〇〇史講義 〇〇編』といったシリーズものを出していて、個人的には非常に優れた出版であり、面白いと思いました。これらの『世界哲学史』や『〇〇史講義』も、第一線の研究者が執筆していて、学術的にもレベルが高いです。

一方、ちくま新書の伝統的な特徴としては、教育問題などについてテーマにした新書が多いイメージがあります。最近は、渋沢栄一の著書を現代語訳した『現代語訳 論語と算盤』もヒットしていました。

岩波新書、中公新書と同様に専門的な内容の本も多いですが、ちくま新書は比較的読みやすい本が多いように思います。

ちなみに、版元の筑摩書房はちくまプリマー新書というレーベルも出しています。こちらはちくま新書よりも入門的な内容を取り扱っていて、新書初心者にはこちらの方がおすすめかもしれません。

講談社現代新書

ちくま新書を先に紹介してしまいましたが、伝統的に岩波新書、中公新書とともに「教養新書」の一角をなしていたのが講談社現代新書です。

巷ではこの三つのレーベルを「新書御三家」とも呼ぶらしいです。ちくま新書を入れると「新書四天王」になるとか。

講談社現代新書の特徴ですが、業界最大手の講談社の新書だけあって、非常に幅広い内容の新書が出ています。歴史や哲学などの従来的な「教養新書」もありますし、丹羽宇一郎氏や出口治明氏など傑出した企業人によるビジネスマン向け新書も出ており、また話題性を重視した新書も出ています。かつては哲学に強いと言われていたようですが、現在ではバラエティに富んでいることが他を寄せつけない強みになっています。

ロングセラーには、福岡伸一先生のエッセイである『生物と無生物のあいだ』などがあります。

現在の講談社現代新書の特徴としては、時には度を越していると思えるほどの「分厚い新書」を出していることでしょうか。新書は本来「一つのテーマ」をわかりやすく解説した本であるはずですが、講談社現代新書は時にこの原則を無視して、非常に厚い新書を出しています。たとえば、大澤真幸先生の『社会学史』などは500ページ以上もあります。長さやテーマなど、色々な意味で自由で寛容なのが講談社現代新書なのかもしれません。

また、講談社現代新書は教養系のテーマの新書でも、比較的読みやすいです。新書を初めて読む人に個人的に一番おすすめなのは講談社現代新書です。

また、講談社はブルーバックスという新書レーベルも出しています。ブルーバックスは、理数系専門の新書レーベルです。理数系の話題に興味がある方は、ぜひブルーバックスを手に取ってみてください。ブルーバックスは、本によっては読みやすい本も多いです。

さらに講談社は講談社+α新書(プラスアルファ新書)というレーベルも持っています。こちらは現代新書よりもさらに実用書寄りです。

 
 

実用新書系

ここまで「教養新書」のレーベルについて紹介してきましたが、従来的な教養ではなく、実用的な知識を志向した新書レーベルもあります。もちろん、すべての出版社が「教養新書」と「実用新書」のどちらか一方しか出さないというわけではないので、便宜的な分類となります。

ここでは、どちらかと言うと「実用新書」を多く出している新書レーベルについて紹介します。

文春新書

文藝春秋が出している新書です。

安倍晋三氏の『美しい国へ』や、菅義偉氏の『政治家の覚悟』、あるいは枝野幸男氏の『枝野ビジョン 支え合う日本』などはすべて文春新書から出ていることからもわかるように、政治家の新書に強いです。

政治家以外の新書については、中高年向けの新書が多い印象があります。また、少し前ですが樹木希林さんの言葉をまとめた『一切なりゆき』は文春新書からのヒットでした。本書に代表されるように、編集力が優れた新書を出しているイメージがあります。

また講談社現代新書などと違って、「ある程度薄い新書」しか出さない傾向にあるような気がします(これは実用新書系のレーベルのほとんどに当てはまると思います)。そこまで長くない時間で読み終わることができるような実用新書が出されています。

新潮新書

新潮社が出している新書です。新潮社は新潮選書というレーベルを持っており、学術的な本は選書の方から出しています。そのため新書の方は、教養的な内容よりは実用的な内容のものが多くなっています。

新潮新書のベストセラーとしては、古いものでは『バカの壁』などがあります。文春新書と同様に、伝統的に中高年向けの新書に強いイメージがあります。

最近のヒットは『ケーキの切れない非行少年たち』と、『スマホ脳』でしょうか。この二冊はかなり売れており、中高年以外の読者も獲得している印象があります。新書界の雄といえる存在かも知れません。

 

 

集英社新書

集英社が出している新書です。

テーマとしては、現在の社会問題や政治についての問題を扱った新書が多いです。

特に、自民党による自民党改憲案などは強く批判する論調でした。

最近では、斎藤幸平さんによる『人新生の『資本論』』がヒットしていたように、リベラル系の論客による新書が比較的多いイメージがあります。

ただ、集英社といえば『週刊少年ジャンプ』に象徴されるマンガですよね。

集英社新書も、マンガ関連の新書は多く出しています。集英社のコミックスに関連した内容の新書であったり、あるいは『荒木飛呂彦の漫画術』のようなマンガ家の著書が出ています。これは他にない集英社新書の強みと言えると思います。

光文社新書

光文社が出している新書です。

新書は一般的に中高年男性がメイン読者層とされているらしいですが、光文社新書は珍しく、30代くらいのビジネスマンを読者として想定しているらしいです。

実際にタイトルなどを見ても、比較的若い読者に向けた新書が多いように見えます。

ベストセラーは『バッタを倒しにアフリカへ』や、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』などでしょうか。後者はまさに若いビジネスマン向けの新書ですね。

光文社新書は、時期によって読める本が変わりますが、けっこうKindle UnlimitedというAmazonの読み放題サービスで読める新書が多いです。Kindle Unlimitedは実用書は意外とたくさん読むことができるので、光文社新書の読者層にはおすすめです。

おわりに

以上、8つの新書レーベルをご紹介しました。

もちろん、ここには取り上げきることができなかった新書レーベルもありますが、主要な新書レーベルの特徴についてご参考になれば幸いです。

いま、新書を読む意味

ところで、インターネットに情報が氾濫した現代において「新書を読む意味ってあるの?」と思う人は多いかもしれません。

ただ個人的には、新書は「何かのテーマ」を一つの本に収めるよう構成されたコンテンツであり、インターネットで検索するだけでは得られないものを得ることができると思います。もちろん、値段に見合うか、というのは別の問題なのですが……

新書を初めて読むという方は、興味のあるテーマ・タイトルの新書を選ぶのがおすすめです。その際にもし似たような新書が複数社から出ている場合には、レーベルごとの特徴について、この記事を参考にしていただければ幸いです。

まとめ

最後に、紹介しきれなかった新書なども含めてまとめたものを置いておきます。

(これでも紹介しきれなかった新書がありますが、ご容赦ください)

教養新書
・岩波新書
・中公新書
・ちくま新書
・講談社現代新書
(NHK出版新書 etc...)

実用新書
・文春新書
・新潮新書
・集英社新書
・光文社新書
(幻冬舎新書、PHP新書、平凡社新書、小学館新書 etc...)

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