高橋留美子の超名作『らんま1/2』を読み直していた。
『らんま1/2』は超名作だが、「考察」すべきような謎はほとんどないのだが、一つだけどうでもいいことに気づいたのでここに書く。
それは、「天童あかねが泳げない理由」である。
『らんま1/2』を読んだ方はご存知のように、ヒロイン・天童あかねは、カナヅチなのである。
しかし、天童あかねは運動神経万能なのにどうして泳げないのか、私はこの設定にずっと疑問を持っていた。――しかし、これは伏線ではないかと読んでいて気づいたのである。
天童あかねは泳げない
『らんま1/2』を読んだことがある方はご存じだと思うが、天童あかねは泳げない。
天童あかねは、運動神経抜群なのにもかかわらずである。
確かに現実世界でも、陸上ではなんでもスポーツができるのに、水泳だけは苦手という人は見たことがある。しかし、運動神経抜群なのに「全く泳げない」という人は、普通はいないだろう。
もちろん「お湯をかけると女体化する/パンダになる」というような奇想天外なマンガの設定について文句を言うのは間違っている。
ここで私が言いたいのは、「運動神経抜群の天童あかねが泳げない」ことは、物語としても意味を持っているからということである。
つまり、天童あかねが泳げないということは、一つの伏線になっているのだ。
「天童あかねがカナヅチ」であることが伏線となるのは、物語の最終盤である。
この記事では具体的な物語展開のネタバレはほぼしていないつもりだが、一切のネタバレを好まない方は、『らんま1/2』を読み終わってからまたこの記事を読みに来てほしい。
あかねと呪泉郷
話を戻そう。物語の最終盤に、呪泉郷に「新たな泉」ができる。
――その名も、「茜溺泉」である。
「茜」というのは、もちろん天童あかねの「あかね」である。
余談だが、中国では名前が平仮名の日本人を表記するときは、日本でありがちな漢字表記に直す。
名前がひらがなのキャラクターの代表例として、『魔法少女まどか☆マギカ』の登場人物の中国語表記を紹介しよう。
鹿目まどか→鹿目円
暁美ほむら→暁美焔
美樹さやか→美樹沙耶香
巴マミ →巴麻美
(佐倉杏子→佐倉杏子)
(中国版Wikipediaより)
他にも、例えば自分の名前が平仮名の方は、中国語名を名乗るときに自分で自分の漢字を決められるわけである。
呪泉郷の謎
――また話が逸れたが、問題は「茜溺泉」である。
要するに、この泉に入ると「天童あかねの姿になる」呪いの泉である。
(ところで私はこの「呪いの泉」にむしろ入ってみたい)
さて、ここで「呪いの泉」ができるメカニズムを確認してみよう。
まずは、呪泉郷ガイドの名台詞を確認しよう。
早乙女乱馬の父・玄馬が「熊猫溺泉」に落ちてしまい、水を浴びるとパンダに変化してしまう身体になってしまったときの台詞だ。
その泉は熊猫溺泉! 二千年前、パンダが溺れたいう、悲劇的伝説があるのだよ! 以来そこで溺れた者、皆パンダの姿になてしまう呪い的泉!
また、他の「呪いの泉」でも、同様の台詞が繰り返される。パンダが他の何かに置き換わるだけである。
ここからわかることは、新しい呪いの泉ができるには、誰かが溺れる必要があるということである。
呪泉郷の設定はよくわからないところも多いが、「姿が変わってしまう」という呪いは、「溺れる」という「悲劇的伝説」の産物である。
そうであるから、おそらく呪泉郷で新しく湧いた泉に誰かが入っただけでは、「呪いの効果」は発動しないのではないかと思われる。
重要なのは溺れることなのである。
話を戻そう。
『らんま1/2』の物語終盤では「茜溺泉」という、新しい「呪いの泉」ができる。
なんだか色々と悪用されそうな泉である。気になる方は読んでみてほしい。
このような「茜溺泉」ができるには、あかねが溺れること――あかねが泳げないことが必要だったのである。
つまり、「運動神経抜群の天童あかねがカナヅチ」という、一見するとおかしい設定は、ここに生かされた伏線なのである。
おわりに
「べつに気絶させて水に沈めたりして溺れさせればいいじゃん」という指摘ももっともだが、少年漫画では敵役もそこまで卑劣にさせてはよろしくないのだろう。
『らんま1/2』は、脱力したマンガなのだから。
その点で、「もともとあかねは泳げなかった」ということにしておけば、物語最終盤で「茜溺泉」をすんなりと登場させることができる。
「天童あかねはカナヅチ」は、あかねの「実は不器用なかわいいところ」を表していると見ることもできるが、個人的にはこの伏線のための設定ではなかっただろうかと考える。
余談だが、この記事を書くにあたって「天童あかね」で検索したら、思った以上にあかねが不人気なことを知った。すぐに手を挙げるところが嫌い、と言う人も多いようだが、原作はアニメに比べてそこまであかねは手を上げない(と思う)ので、ぜひ多くの人に原作を読んでみてほしいと思う。
▼サムネに使わせてもらったのはアニメのこの話
- 発売日: 2016/10/01
- メディア: Prime Video