シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』あらすじー「自立した女性」ジェーンの行動原理とは

ジェーン・エア下

古典的名作であるシャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』のあらすじについて記す。書評・考察については別記事にまとめているので、そちらを見ていただきたい。

(なお岩波文庫・光文社古典新訳文庫での表記はジェイン・エアだが、この記事ではジェーンに統一する)

ジェイン・エア(上) (岩波文庫)

「ジェーン・エア」あらすじ

孤児であるジェーン・エアは、不幸な少女時代をリード夫人とその子どもたちの元で送る。ジェーンはリード氏の姪に当たるが、リード氏が死去して以降は、全く血のつながらない夫人のもとで養育されている。

リード夫人は、(中略)夫が死んでからなんの関係もなくなった厄介者を、どうして愛することができるだろう?

自分が愛することのできない見知らぬ子供の親代わりになるという、無理に強いられた約束に縛られていることを感じ、 自分の家族のなかに永久に割り込んできた気の合わないエトランゼを世話せねばらぬとは、何とも煩わしいことであったに違いない。

ジェーンは9歳ころになると、厄介払いのように寄宿学校ローウッド学校に送られ、リード夫人のもとを去る。

ジェーンは、リード夫人から伝えられた無実の悪評を、院を運営するブロックルハースト氏によって全生徒によって言い広められてしまう。

だが、そこにはヘレン・バーンズという生徒がいた。彼女は、ジェーンのことを避けなかった。

もし全世界の人が、あなたを憎み、あなたを悪人だと信じたとしても、 あなたの良心が、あなたの正しいことを証明し、無罪を言い渡すのだったら、あなたは味方がないわけではないことよ。

大人びたヘレンに尊敬と友情を深めるジェーンであったが、 寄宿学校では不衛生の問題からチフスが大流行し、ヘレンは肺を病んで死亡する。

しかし、病気の流行がきっかけとなってローウッド学院はその劣悪な環境を世間に暴かれることになり、結果として環境は改善荒れることになる。

その後生徒として6年間優秀な成績を収めたジェーンは、引き続きローウッドで教師として2年間を過ごす。

ローウッドでの生活は安定していたが、ジェーンは変化を求めるようになる。

わたしは自由を渇望した。自由を求めてあえいだ。自由のために祈ったのである。

(中略)

(では)とわたしは、なかば絶望して叫んだ。(せめて新しい奉仕を与えたまえ!)

ジェーンはソーンフィールド邸でロチェスター氏によって家庭教師として雇われる。

ロチェスターは裕福だったが、容姿は端正とはいえない中年男性である(ジェーン自身も美人ではない)。

ロチェスターとジェーンは次第に惹かれていき、身分違いの恋は成就したかに見えた。

しかし、式当日に、ジェーンとロチェスターの結婚は潰える。

「この結婚式はぜんぜん無効です」

「その障害というのは、ただ以前の結婚が存在しているという点にあるのです。ロチェスター氏には、現在、存命中の夫人があります。」

当時のイギリスでは、離婚することはできなかった。

ロチェスターには、精神に異常をきたしてしまった(今でいう統合失調症か)、夫人バーサ・メイスンがいたのである。

また、たびたびジェーンを不思議がらせた女中グレイス・プールは、バーサの監視人であったことがわかる。

しかし、なおロチェスターはジェーンを求める。

「あなたはわたしの共鳴者でありーーよりよいわたし自身であり、わたしのよき天使です。強い愛着でわたしはあなたに結びつけられています。」

(中略)

「どうして黙ってるの、ジェーン?」

だが、ジェーンはこう答える。

「わたしは、あなたに罪を犯すことなくお暮しになることを、おすすめいたします。安らかな死をお迎えになることを望んでおります」

(中略)

「ロチェスター様、わたしは、自分がそんな運命を捕えようとはしないように、あなたにも押しつけはいたしません。わたしたちは苦しむために、忍従のために生まれてきたのですーーあなたもわたしも、同じように、ご辛抱なさることです。わたしが、あなたを忘れてしまう前に、あなたはわたしをお忘れになるでしょう。」

そしてジェーンは人に知られぬようソーンフィールドを去る。

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ジェーンは乞食に身をやつし、行き倒れかけていたところを牧師セント・ジョンとその妹、ダイアナとメアリーに助けられ、世話になることになる。

さらに、ジョンたちがジェーンのいとこであることが判明し、幸福に勉学に励みながら過ごす。

そんな中、ジョン・エアという父方の叔父が亡くなったことを知らされ、さらにジェーンが多額の遺産を引き継ぐことになる。ジェーンは、ここに経済的にも独立した女性になったのである。

そんな中、ジョンは愛する妹たちと過ごす安定し幸福な生活を捨て、宗教者としての使命を果たすためにインドへ宣教をしにいくことを決意したという。ジョンはジェーンを愛しているわけではないが、ジェーンの献身性を高く評価し、妻としてともにインドに行ってくれないかと頼む。

ジェーンは悩む。妻としてでないならインドに行ってもいいが、愛のない結婚はすべきでないとジェーンは考える。だが、ジョンは体面上、ジェーンに妻になってもらわないと困るという。

ジェーンは決断を下す。

「あの方はインドで一緒に働く相手がほしいという、ただそれだけの理由で、わたしに結婚を申しこんだのですわ。」

(中略)

「結婚は、お断りしました」

ジョンの求婚を拒んだのちどうすればいいか途方に暮れたジェーンは、「お示しく下さい。わたしの行く道をお示しください!」と天に訴えた。

その時ジェーンは電撃のような感覚を覚え、ロチェスターの幻聴を聞く。

いてもたってもいられなくなりソーンフィールドに向かったジェーンが目にしたのは、焼け落ちた屋敷と不具になったロチェスターであった。

聞けば、バーサが屋敷に放火したという。その時、バーサは亡くなった。

そして障壁がなくなった二人は、晴れて結ばれたのである。

[outline]

おわりに

あらすじが長くなってしまったので、考察は別の記事に分けて書いた。

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ジェーン・エア上

ジェーンは幼い時から「芯の強い」「自立した」女性である。これが作品の第一のテーマで、この作品が同時代において画期的であった理由である。

だが、バーサの死によってハッピーエンドが成り立つというのは、今日的観点からはいかがなものか? という視点もあり得るだろう、という点について考察を記している。

あらすじのツッコミどころとしては、ラストでジェーンがロチェスターの幻聴を聴くというのは超自然的で、物語としてもあまりに唐突という感を受ける。これは物語の評価を落とす要因になるが、ある意味ロチェスターとジェーンは魂が共鳴するような運命的なカップルなのであり、そのことがこの展開によってより一層強固なものになっていることは評価できるだろう。

なお、物語前半のヘレン・バーンズのくだりなどは作者シャーロット・ブロンテの実体験をもとに書かれているだけあり、非常に読みごたえがある。

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