海外文学の良いところは、他国の歴史や文化を感じることができるところだ。日本の文学も好きだけれど、それぞれ違った良さがある。
海外文学を読んでいるうちに、主要な海外文学を死ぬまでに読んでみたいという気持ちになってきてきた。だが、「海外文学はどんな本を読んだらいいだろうか?」と悩む方は多いのではないだろうか。
そんな中、新潮社『考える人』2008年の春号に掲載された「海外の長編小説ベスト100」が、読書の道しるべとして有用そうだったのでここにまとめ、読んだものについては感想を付した。
なお、このランキングには(主に長すぎるという理由で)必ずしも万人受けするわけではない作品も多く含まれている。そのため、「海外文学を初めて読む参考にしたい」という方は、こちらの記事を見ていただきたい。
海外文学の名作といわれる作品には、長くて読み始めるのに勇気がいる作品が多い。でも、読んでみると日本の小説と違った面白さがある。 今回は、文庫本一冊で読める、はじめて海外文学を読むという方にも遠慮なくお薦めできる海外文学を紹介したい。 […]
* * *
この記事で読了したものについては独断と偏見で「読みやすさ」と「面白さ」のコメントを付したが、あくまで個人的感想であり、またランキング内での相対評価であることはご了承いただきたい。
(読了・記事投稿次第随時更新)
*一覧は記事のいちばん最後にあります。
1『百年の孤独』ガルシア・マルケス
ガブリエル・ガルシア・マルケス「百年の孤独」という作品がある。同名の酒の元ネタである(多分)。 この作品は、「20世紀の傑作」ランキングなどでたいてい上位にランクインする作品(特にこのランキングでは第一位にランキングしている)であり、[…]
コメント:海外文学マニア必読!(読みやすさC/面白さB)
1位は『百年の孤独』。作者はガブリエル=ガルシア・マルケス(1982年ノーベル文学賞受賞)。
物語は「マコンド」という架空の町の建設から滅亡までの記録で、まるで神話のよう。かなり分厚い本で、ところどころ難解すぎるので、読み切るのに2か月近くかかったが、南米の独特な語りのリズムはまさに「海外文学を読んでいる!!」という気持ちになる。
この本は単行本でしか出ていない。文庫化することはあるのだろうか……?
2『失われた時を求めて』プルースト
第一篇のみ読了。このランキングの中で一番長い作品の一つだが、話自体はある程度独立している。なので気負わずに、少しずつ読んでいっていい作品だと思う……と思いつつ第二篇以降をまだ読んでいない。
第一篇第一部第一章のラストの場面で、紅茶に浸したプチ・マドレーヌを味わった瞬間に過去を思い出すシーンは有名。
3『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー
未読。
3位は言わずと知れたドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つにも選ばれている、非常に評価の高い作品。なお、モームの『世界十大小説』はすべてランクインしている。
4『ドン・キホーテ』セルバンテス
子供向けのものなら読んだことがあるが……。未読。
4位はセルバンテスの『ドン・キホーテ』。子供向けの『ドン・キホーテ』を読んだ当初は、この作品がここまで文学的に評価されているとは知らなかった。
5『城』カフカ
海外文学の名作と言われるものは、確かに難解なものは多いけれど、たいていどこか興奮できるような箇所があるものである。 でも、率直に「つまらない」と思った作品もあった。 私の中でのその代表が、フランツ・カフカの『城』である。 この作品を読[…]
コメント:くせになるつまらなさ!(読みやすさC/面白さC)
5位はカフカの『城』。カフカはトップ10に2作ランクインしている。
主人公がたらいまわしにされる物語。
感想記事にも書いた通り、娯楽作品を求めるなら平坦すぎて正直つまらない。だけど、色々な解釈が可能で多くの批評を生んできた作品で、色々と考えさせるところはある。やはり死ぬまでには読んでおいてよかったなと強く思っている。訳が古くていいなら、青空文庫で無料で読めるのはおすすめポイント。
6『罪と罰』ドストエフスキー
2021年に生誕200年を迎えたドストエフスキーの作品は「現代の予言書」と言われる。誰が言い始めたのか厳密にはわからないが、たとえば新潮文庫版『カラマーゾフの兄弟』に寄せられた原卓也の解説には「この作品は今日でもなお、人類の未来に対する予言[…]
コメント:意外と面白いから読んでほしい!(読みやすさB/面白さA)
このランキング2度目のドストエフスキーは、言わずと知れた名作『罪と罰』。名前は知ってるけど、読むのは疲れそうだなあ……と思っている人が多いと思うが、実はけっこう面白い。『罪と罰』の犯人の主人公が追い詰められていくところは、刑事コロンボにも影響を与えたらしい。もちろん娯楽小説ではないし重厚な小説だが、推理小説的な要素もあって意外と面白い小説である。
7『白鯨』メルヴィル
児童向けのなら昔読んだことがある。「主人公たちが勝つ」物語しか読んだことがなかった幼き私にとって、この作品はあまりに衝撃だった。
余談だが、スターバックスの店名は『白鯨』の登場人物の名前に由来する。こういう雑学的な気づきを得られるのは、海外文学を読む醍醐味だろう。
サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
8『アンナ・カレーニナ』トルストイ
世界文学上に今なお燦然とその輝きを放ち続ける巨匠レフ・トルストイの作品『アンナ・カレーニナ』は、現代でも名前はおそらく多くの方が聞いたことがあると思う。 そしてこの物語が、主人公アンナ・カレーニナが、熱狂的な恋愛の末、鉄道自殺を遂げる[…]
コメント:長いことを除けば面白い!(読みやすさA/展開の面白さB)
読了。
8位はトルストイの『アンナ・カレーニナ』。読みやすいが……めちゃくちゃ長い。長いのは、主人公アンナ以外の物語も多く描かれているから。半分以上アンナは出てこないし。「恋愛小説」を期待すると期待外れになってしまう恐れがあるので、その場合はまずは映画などを観てみるのがいいと思う。
9『審判』カフカ
9位は『審判』。
カフカはトップ10に2作ランクイン。カフカ作品は、訳が古くても大丈夫ならたいてい青空文庫で無料で読める。
10『悪霊』ドストエフスキー
10位は『悪霊』。
このランキング3度目のドストエフスキー。トップ10に3作品ランクインしているのは、選者の好みもあろうが、さすがとしか言いようがない。
11『嵐が丘』エミリー・ブロンテ
コメント:前半で投げ出さず読むべし!(読みやすさB/面白さA)
読了。Kindle Unlimitedで読み放題で読める。
女性作家の中での第一位は『嵐が丘』となった。話自体は『金色夜叉』のような復讐譚で分かりやすいが、構成が複雑で面白い(一方で読みにくい、と感じる人も多いだろう)。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
12『戦争と平和』トルストイ
私は昔読んで挫折した。トルストイを読むなら先に『アンナ・カレーニナ』を読むのがいいと思う。読みやすいし、『戦争と平和』に比べれば短いので。
サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
13『ロリータ』ナボコフ
いわゆる「ロリコン」や「ロリキャラ」あるいは「ゴスロリ」「ロリータファッション」などの「ロリ」というのは、ロシア出身のアメリカの作家ウラジーミル・ナボコフの小説『ロリータ』に登場する少女ドロレス・ヘイズの愛称「ロリータ」に由来している。 […]
コメント:先入観に囚われず読むべし!(読みやすさA/面白さA)
13位はナボコフの『ロリータ』。
言うまでもなく「ロリコン」の語源となった、変な意味でも有名な小説であるが、小説としての面白さや凝らされた技巧の実力は圧倒的である。いわゆる「ロリータ」の語源って何なんだ? という気持ちで読んでみるのも良いし、また今まで敬遠していた読書家にもぜひ読んでみてもらいたい本である。巧みに伏線が張り巡らされていて、推理小説としても面白い。
14『ユリシーズ』ジェイムズ・ジョイス
一応通して読んだことはあるが…… 正直よくわからなかった。
『ユリシーズ』を読む前に、とりあえずジョイスの『若い藝術家の肖像』(このランキングでは90位)を読んでおいた方がいいかもしれない。
『若い藝術家の肖像』は、『ユリシーズ』の主人公の一人の幼年~青年時代を描いているので、読んでおくと『ユリシーズ』を読むときに役立つ。
15『赤と黒』スタンダール
15位はスタンダール『赤と黒』。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つでもある。
スタンダールは『恋愛論』という本も書いていて、恋愛について考察した古典としてなかなか面白い。近いうちに『赤と黒』も読みたい……
恋が始まるには、ほんの少しの希望があれば十分です。 ――スタンダール という引用から始まるマンガ作品があるが、さらに言えばこの言葉はスタンダールの『恋愛論』第三章冒頭からの引用である。 『恋愛論』という本は、恋愛について論じた[…]
16『魔の山』トーマス・マン
16位はトーマス・マン『魔の山』。堀辰雄の『風立ちぬ』同様、サナトリウム(結核療養所)を舞台とした小説。
かなり長いのと、『風立ちぬ』があまり好みでなかったせいでなかなか読もうという気になれていない……
17『異邦人』カミュ
ボーガンによる殺人事件というニュースを見た。亡くなられた方のご冥福をお祈りする。 不謹慎ながら、私がボーガンと聞いて思い出すのは、ドラマ『相棒』Season1 第5話「目撃者」という話である。 小学校周辺で起きたボーガンによる殺人事件を[…]
コメント:これを読んで海外文学の適性を測るべし!(読みやすさA/面白さA)
17位はカミュの『異邦人』。有名な作品だが、主人公・ムルソーがあたかもサイコパスのような性格をしており、私たちの常識に疑問を投げかけるような内容である。それゆえ、不条理文学と呼ばれる。
おそらくランキングの中で一番短い作品の一つ。最初に読む本として、ぜひお薦めしたい。『異邦人』が全く面白くなかったら、他の海外文学作品を読むのは厳しいかもしれない……
18『白痴』ドストエフスキー
18位は『白痴』。早くもこのランキング4度目のドストエフスキーである。
19『レ・ミゼラブル』ヴィクトル・ユーゴー
ミュージカルなら観たことがあるが…… 原作はなかなか長くて読めていない。
20『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン
「トム・ソーヤの冒険」の続編。子供向けのなら読んだことがある気がするが……
21『冷血』トルーマン・カポーティ
トルーマン・カポーティというと奔放な女性を描いた『ティファニーで朝食を』のイメージが強いが、ノンフィクション・ノベルという分野を開拓した小説家でもある。カポーティが「ノンフィクション・ノベル」という境地を開いた作品こそ、この『冷血』("In[…]
コメント:ノンフィクション好きなら絶対読むべし!(読みやすさA/面白さA)
21位はトルーマン・カポーティの『冷血』。カポーティというと『ティファニーで朝食を』など現実離れした物語に定評があるが、うってかわって『冷血』は実在の殺人事件を描いたノンフィクション・ノベル。
犯罪の捜査や、殺人犯の生い立ちや心理に迫ったノンフィクションの名著であるとともに、カポーティによる巧みな描写や構成によって小説としての価値も非常に高い。ノンフィクションが好きな人にお薦めしたい作品第一位。訳が新しいのも良い。
22『嘔吐』サルトル
22位は『嘔吐』。
言わずと知れた、ノーベル文学賞を辞退したことでも有名な哲学者サルトルを代表する小説。
23『ボヴァリー夫人』フロベール
23位はフロベール『ボヴァリー夫人』。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
フローベールは「ボヴァリー夫人とは私なのです」と語ったことがあるらしいが、途中までしか読んでいないので私にはよくその意味がわからない。
24『夜の果てへの旅』ルイ=フェルディナン・セリーヌ
東京大学出版会から出ている『教養のためのブックガイド』という本があり、おもしろいのだが、その中で一番面白いのは「読んではいけない」本も挙げられていることである。 そのような「読んではいけない15冊」として挙げられているうちのひとつが、フラ[…]
コメント:厭世観を持っている人間必読の書(読みやすさB/面白さB)
24位はルイ=フェルディナン・セリーヌ『夜の果てへの旅』。
この小説は、東京大学出版会の『教養のためのブックガイド』という本では「読んではいけない」本に指定されている。なぜかというと、『夜の果てへの旅』は、すべてを否定する呪いの小説だからだ。読んでも「人間の美しさ」みたいなものを感じることは決してできないが、時にはそういう小説を読むのも大事だと思う。
25『ガープの世界』アーヴィング
25位はアーヴィング『ガープの世界』。1978年に発表されたこの作品は、一躍アーヴィングを大作家に押し上げた。存命作家の作品では『ガープの世界』が1位。
26『グレート・ギャツビー』フィッツジェラルド
読了
村上春樹も大好きなことで知られる『グレート・ギャツビー』。華麗だけれども哀しく美しい物語。
27『巨匠とマルガリータ』ブルガーコフ
27位は『巨匠とマルガリータ』。ソ連当局によって体制批判として受け止められ、26年間出版されなかったという本。
28『パルムの僧院』スタンダール
28位はスタンダール『パルムの僧院』。
スタンダールは15位の『赤と黒』に続いて2作目。
29『千夜一夜物語』
29位は『千夜一夜物語』。言わずと知れた、アラビアンナイトの元ネタを含む短編集。
岩波文庫版で一巻だけ読了。とても面白かった。
岩波文庫の第一巻に収録されているあたりの短編が一番成立年代が古いらしく、まずは第一巻だけでも読むと良いかもしれない。
30『高慢と偏見』ジェーン・オースティン
読了。
女性作家2人目はジェーン・オースティン。代表作『高慢と偏見』がランクイン。ツンデレの古典。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
31『トリストラム・シャンディ』ローレンス・スターン
コメント:昔の小説を侮るな!(読みやすさA/面白さA)
読了。
31位は『トリストラム・シャンディ』。この作品は一見マイナーに思えるが、マジで面白い。トリストラム・シャンディの半生を描いた作品だが、その描き方がめちゃくちゃ奇抜なのである。ーーまず、彼が精子だった時から語りが始まる。ーーとだけ言えば少しはこの作品の面白さが伝わるだろうか。メタ的な要素も存分に含まれている。
この小説は18世紀中葉の作品なのだが、読者をからかうような技巧が尽くされていて全く古さを感じさせない。夏目漱石の『吾輩は猫である』にも影響を与えたという。
32『ライ麦畑でつかまえて』サリンジャー
32位は『ライ麦畑でつかまえて』。青春小説の古典的名作。
33『ガリヴァー旅行記』スウィフト
33位は『ガリヴァー旅行記』。
34『デイヴィッド・コパフィールド』ディケンズ
サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。『クリスマス・キャロル』でも有名なイギリスの国民的作家チャールズ・ディケンズの自伝的小説。
35『ブリキの太鼓』ギュンター・グラス
ドイツのノーベル文学賞受賞作家、ギュンター・グラス(1927~2015)の代表作に『ブリキの太鼓』という作品がある。 (映画化されているものも有名だが、この記事では原作の小説のみ取り扱う) 一行で解説すると、この小説は「主人公が[…]
コメント:子どものままでいることは幸せか?(読みやすさC/面白さB)
35位はノーベル文学賞作家ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』。
主人公オスカルの設定は「自分の意志で3歳時点で成長を止めた」という人物であり、いわば「見た目は子ども、頭脳は大人」である。しかも奇声を発してガラスを割る超能力(?)まで持っている。奇想天外で面白いと言えば面白いのだがーーいかんせん長く(文庫三巻)、このランキングの中で最初の一冊には絶対におすすめできない。海外文学愛好家にはおすすめ。
36『ジャン・クリストフ』ロマン・ロラン
フランスの作家ロマン・ロランの代表作、『ジャン・クリストフ』。ロランはこの小説でノーベル文学賞を受賞。
ベートーヴェンをモデルにすると言われる音楽家ジャン・クリストフを主人公にした長編小説。
37『響きと怒り』フォークナー
読んでいて、あまりに理解が追い付かなくて笑ってしまった小説がある。 「こんなのわからねーよ!」と、読んでいながらツッコんでしまうのである。 その作品こそ、ノーベル文学賞作家ウィリアム・フォークナーの代表作『響きと怒り』である。だが、もち[…]
コメント:あえて難解なのを読みたいなら読むべし!(読みやすさC/面白さC)
37位はノーベル文学賞作家ウィリアム・フォークナーの『響きと怒り』。
このランキングは『響きと怒り』に加えて『八月の光』、『アブサロム、アブサロム!』というフォークナーの三大名作すべてがランクインしている。
『響きと怒り』は、知的障碍を持っている語り手や重度の抑鬱状態にある語り手などを登場させた、叙述方法的にも非常に特徴がある唯一無二の作品。人によってはめちゃくちゃ面白いはず。
38『紅楼夢』曹雪芹・高蘭墅
中国の「四大奇書」の筆頭。「四大奇書」はすべてランクインしている。
『紅楼夢』は、四大奇書の中で一番エッチな作品。
39『チボー家の人々』デュ・ガール
ロジェ・マルタン・デュ・ガールをノーベル文学賞に導いた作品。
カトリックとプロテスタントという宗派の違う若者の友情を描く。白水Uブックスで全13巻。
40『アレクサンドリア四重奏』ロレンス・ダレル
イギリスの小説家ロレンス・ダレルによって1950~60年代にかけた発表された長編小説。
アレクサンドリアはエジプトの都市。アレクサンドリアを舞台に4つの視点から物語が語られる小説で、タイトルがカッコいい。
たしか森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』に、稀覯本として登場した記憶がある。やや入手しにくそう。
41『ホテル・ニューハンプシャー』アーヴィング
アーヴィングは2作目。
42『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ
私は寝る前に本を読むのだが、私の「寝る前に読む本」シリーズで最高に素晴らしかったのが、このミラン・クンデラの『存在の耐えられない軽さ』である。 正直、この本は恋愛小説としてはつまらないかもしれない。だから集英社文庫の帯にある「20世紀[…]
コメント:言語センスがかっこよすぎる(読みやすさA/面白さB)
42位はミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』。
チェコのプラハの春を題材にした恋愛小説であるが、恋愛小説である以上にクンデラの哲学的な思考と卓越した表現のかっこよさが光る作品。そもそも「存在の耐えられない軽さ」というタイトルがかっこいい。クンデラの哲学を楽しみたい方は、ぜひこの作品を。
98位にランクインしている『冗談』は、『存在の耐えられない軽さ』より平易で物語として面白い作品で、こちらもお薦めしたい(むしろ個人的には『冗談』を先に読むことをお薦めしたい)。
43『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ
アレクサンドル・デュマによる長編小説。日本では『巌窟王』の邦題でも知られる復習譚。
44『変身』カフカ
海外文学はそれなりに読んできたが、カフカはいまいち「わからない」という感想を持っている作家だ。 しかし、むしろ、わからないところがクセになるともいえる。面白さがよくわからなくても、読み終わると「すごいものを読んだ」という気持ちになる。 […]
コメント:短いのでとりあえず読むべし(読みやすさA/面白さB)
44位はカフカの『変身』。
ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、ベッドのなかで自分の姿が一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。
という書き出しは、知っている人が多いだろう。不条理で色々と考えさせる物語でありながら、比較的わかりやすく短いのでお薦め。興味がある方は、カミュの『異邦人』とあわせておすすめしたい。
45『冬の夜ひとりの旅人が』カルヴィーノ
45位はカルヴィーノ『冬の夜ひとりの旅人が』。
カルヴィーノは『なぜ古典を読むのか』(河出文庫)だけ読んだことがある。この本は、古典作品を読んでみようと考えている人に特にお薦め。
46『ジェーン・エア』シャーロット・ブロンテ
ジェーン・エアといえば、古典的・典型的なシンデレラ・ストーリーと思われている人も多いだろう。 それは一面では誤りではないのだろうが、この古典的名作をそのように表層的にしか読まないというのには個人的には反対である。『ジェーン・エア』は、[…]
コメント:イギリス文学入門になる読みやすい恋愛小説!(読みやすさA/面白さA)
46位は『ジェーン・エア』。妹のエミリー・ブロンテ、ジェーン・オースティンに続く女性作家の登場。感想を記事に書いたが、やはり女性の自立の象徴的な作品。特別美しいわけではないジェーンが、真実の愛を掴むまでの物語である。ご都合主義な面も否めないが、女性の自立した愛を描いた古典的かつ金字塔的な作品。
47『八月の光』フォークナー
8月中に読み終えたいと思っていた本をようやく読み終えた。 それが、この本。1949年のノーベル文学賞を受賞したことでも知られる、アメリカ文学の大家ウィリアム・フォークナーの『八月の光』である。 折しもBLM(Black Lives Ma[…]
コメント:これぞアメリカ南部ゴシック小説(読みやすさB/面白さB)
47位はフォークナー『八月の光』。黒人と白人の混血として生まれた男ーーすなわち、黒人社会からも白人社会からも疎外されるーーの孤独を中心に、アメリカ南部に生きた人々を描いた大作。
フォークナーは1949年にノーベル文学賞を受賞したアメリカ文学の大家。このランキングでも37位の『響きと怒り』に続いて2作目で、61位にも『アブサロム、アブサロム!』がランクインしている。物語としては『八月の光』が一番読みやすいと思う(ただ、読んで衝撃を受けるのは『響きと怒り』と『アブサロム』だろう)。
48『マルテの手記』リルケ
ライナー・マリア・リルケの『マルテの手記』は、長編小説というよりは詩である。 作家志望だけど売れない青年の、悩みと回想をひたすらに吐露したような作品で、ストーリー性はない。 しかし、ストーリー性がないからといって、その作品が面白くないわ[…]
コメント:ストーリーはないが名文の数々(読みやすさC/面白さC)
48位は、ライナー・マルテ・リルケ『マルテの手記』。この作品は、長編小説というよりは、詩あるいは自省録のようなものだろう。その名の通り手記の体裁をとっていて、死や孤独、人生について考察がなされる。あらすじの面白さを求める人には全くお薦めできないが、この本はどこをとっても名文と言えるような美しい言葉の数々で、表現の美しさを求めるなら一番お薦めかもしれない。Kindle Unlimitedでも読める。
49『木のぼり男爵』カルヴィーノ
45位『冬の夜ひとりの旅人が』に続き、49位はカルヴィーノの『木のぼり男爵』。
いまカルヴィーノで一番手に入りやすいのは岩波文庫の『まっぷたつの子爵』だが、こちらはランクインしていない。
50『日はまた昇る』ヘミングウェイ
ヘミングウェイの代表作。
51『水滸伝』施耐庵
中国「四大奇書」の一。
52『人間喜劇』バルザック
老人ホーム(宿泊ありのデイサービス)でボランティアをしたことがある。 実の子どもたちもほとんど世話をしに来てくれないようなお年寄りを目の当たりにして、心が痛んだ。ーーそのようなお年寄りの方々も、若いときは人並み以上に子どもに愛情と金銭を注[…]
『人間喜劇』は一つの小説ではなく「作品群」では? と思うが、52位にランクイン。
なお、『人間喜劇』の代表作『ゴリオ爺さん』(ペール・ゴリオ)は56位にランクインしている。まずは『ゴリオ爺さん』を読むのがいいのではないかと思う。
53『路上』ケルアック
著者ジャック・ケルアックはアメリカの小説家。
著者の放浪体験をもとに1957年に書かれた本作は、カウンターカルチャーに大きな影響を与えた。(現行の版のタイトルは『オン・ザ・ロード』)
54『危険な関係』ラクロ
フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロによって1782年に書かれた書簡体小説。著者ラクロは、今ではこの作品しか有名でない「一発屋」だが、この作品で描かれた恋愛心理戦は今日も高く評価されている。
55『木曜の男』チェスタトン
政府なんて無いほうがいいのではないかと思わずにいられない出来事が世界で起きている。無政府主義こそが理想なのかもしれない。 しかし、現実には「無政府主義」が想像した通りの理想的なものにはならないだろう、ということは理解している。 […]
コメント:面白いけどモヤモヤする推理小説(読みやすさA/面白さB)
55位はイギリスの推理小説作家チェスタトンの『木曜の男』。
創元推理文庫から出ている作品は、このランキングの中ではこの作品が唯一だろう。
でも、この小説はただの「推理小説」ではない…… たしかに推理小説的なのだが、謎が解けるとむしろ一層「よくわからないモヤモヤ感」が深まる。不思議で奇天烈な作品を読みたい方にはおすすめしたい。
56『ゴリオ爺さん』バルザック
老人ホーム(宿泊ありのデイサービス)でボランティアをしたことがある。 実の子どもたちもほとんど世話をしに来てくれないようなお年寄りを目の当たりにして、心が痛んだ。ーーそのようなお年寄りの方々も、若いときは人並み以上に子どもに愛情と金銭を注[…]
コメント:パリ社交界の栄光と闇(読みやすさB/面白さB)
56位はバルザック『ゴリオ爺さん』。娘のために金を使いすぎて没落し、娘にも見放された悲しい老人「ゴリオ爺さん」と、社交界での出世を目指す野心家ウージェーヌ・ド・ラスティニャックの物語。栄枯盛衰の激しいパリで光と闇が描かれる。サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。
57『源氏物語』紫式部
現代語訳で良いなら読了したような、していないような……
58『幻滅』バルザック
56位の『ゴリオ爺さん』に続き、バルザックの『幻滅』がランクイン。
59『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン
耽美的に恋人たちを描いたフランス文学。『うたかたの日々』や『日々の泡』と訳される。
青春小説だが、非現実的な幻想的なことも起きる独特の小説でファンが多い。
60『スローターハウス5』カート・ヴォネガット
こういうと語弊を招くかもしれないが、私は戦争文学が好きである。 戦争は絶対に繰り返してはいけないと思っているし、体験したくもない。 しかし、だからこそ戦争に巻き込まれた人々の記憶は継承されるべきであると考えているし、文学作品に描[…]
コメント:戦争体験×SF(読みやすさA/面白さA)
60位はカート・ヴォネガットの『スローターハウス5』。
作者の従軍経験をもとに書かれた戦争文学でもあり、またSFでもあり、さらに斬新な語りの手法が採られたポストモダン文学の象徴的作品でもある。SFの定義にもよるが、このランキング唯一のSFともいえる。でも、やっぱり文学寄りだから「SFが読みたい」という人にはお薦めできないかもしれない。
61『アブサロム、アブサロム!』フォークナー
フォークナーは 『響きと怒り』、『八月の光』に続いて3冊目。
これもまたアメリカ南部を舞台にした小説で、例の如く意識の流れの手法が使われている。『響きと怒り』よりはわかりやすいけど『八月の光』よりわかりにくく、また読むなら『響きと怒り』を先に読んでおいた方がいい、という感じの小説で、順位がこの三作で一番下なのは仕方ないか。
62『ハワーズ・エンド』フォースター
1910年発表のE・M・フォースターの代表作。
63『魔術師』ジョン・ファウルズ
1965年発表。タイトル通り、次第にオカルティズムにも近づいていくような作品……らしい。
64『ムーン・パレス』ポール・オースター
1989年発表の、ポール・オースターによる長編小説。
新潮文庫で柴田元幸訳で出ている。柴田元幸は『翻訳夜話』など村上春樹との交流でも知られ、ファンも多い訳者。海外文学を読むときには、訳者で選ぶというのも一つの手。
65『アウステルリッツ』ゼーバルト
ランキングで唯一の21世紀の作品。この作品がゼ―バルトの遺作となった。
66『日の名残り』カズオ・イシグロ
小説の主人公というものは、並外れた知性や洞察力の持ち主であることが多い。でも、カズオ・イシグロの『日の名残り』(土屋政雄訳)は、この原則にまったく反する。 「普通の人」が人生の夕暮れに差しかかったときに、ふと自分の人生とは何だったのかを考[…]
コメント:老若男女におすすめできる一冊(読みやすさA/面白さA)
66位はカズオ・イシグロの『日の名残り』。第二次世界大戦後のイギリスの老執事を主人公とした作品。このリストの中では珍しい、現在進行形で活躍している作家による作品。新しい分読みやすく、またユーモアにも富んでいる一方で、文学的な価値(技法・テーマの秀逸さ)も引けを取らない。他人に一番薦めたい作品の一つ。
67『悪童日記』アゴタ・クリストフ
アゴタ・クリストフのデビュー作にして代表作。
クリストフはハンガリー出身ながら1956年のハンガリー動乱で難民としてスイスに定住、母語でないフランス語で本書を執筆した。戦時下の過酷な状況を生きる双子を描いた作品。
68『ガルガンチェアとパンタグリュエル』ラブレー
16世紀にフランスの人文主義者ラブレーが書いた小説。
教会などの権威を風刺していたため、禁書とされた。
69『若草物語』オールコット
昔読了した記憶はある。
70『回想のブライズヘッド』イーヴリン・ウォー
コロナ禍の現在では、友人と顔を合わせて語らい、共に旅行をした日々でさえ、もはやノスタルジーの対象となってしまった。 そんなノスタルジックな気分に浸ると思い出すのは、イギリスの作家イーヴリン・ウォーの『回想のブライズヘッド』という小説だ。 […]
コメント:イギリスの貴族に勝手にノスタルジーを抱いている人なら必読(読みやすさA/面白さA)
70位はイギリスの作家イーヴリン・ウォーの『回想のブライズヘッド』。
『回想のブライズヘッド』は2009年の岩波文庫版の邦題で、それ以前の版の原題に近い『ブライズヘッドふたたび』『ブライズヘッド再訪』のタイトルの方が有名かもしれない。第二次世界大戦に従軍している主人公が青春時代や古き良き過去を回想するノスタルジー小説である。ドラマ『ダウントンアビー』のような20世紀前半のカントリーハウスが好きな人は必読。
71『ある家族の会話』ナタリア・ギンズブルグ
ギンズブルクはイタリアの女性作家。本作はギンズブルクの自伝的作品。
ギンズブルクは、須賀敦子が私淑していた作家としても日本では知られている。
72『トム・ジョーンズ』ヘンリー・フィールディング
サマセット・モーム『世界の十大小説』の一つ。なお、世界十大小説では一番古い作品(唯一18世紀の作品)である。
18世紀のイギリスを舞台にした作品。
73『大いなる遺産』ディケンズ
イギリスの国民的作家ディケンズの代表作。
74『心は孤独な狩人』カーソン・マッカラーズ
カーソン・マッカラーズはアメリカの女性作家。本作はアメリカ南部(すなわち北部より黒人差別が酷く貧しい地域)を描いた、いわゆる「南部ゴシック小説」。
最近(2020年)、村上春樹による訳が出版され、翻訳も新しくなったうえ、以前より非常に入手しやすくなっている。
75『緋文字』ナサニエル・ホーソーン
途中まで読んだが飽きた。
フォークナーは読めたのに、『緋文字』は投げ出してしまっている。
76『大地』パール・バック
半分くらい読んだ、面白かったが長いので……。
バックは中国育ちのアメリカの女性作家。1938年ノーベル文学賞。
77『狭き門』アンドレ・ジッド
かつて進路について考えていたころ、ある人から「一番難しい目標を目指せ」と言われたことがある。 「難しい目標」はそのタイミングを逃したら叶えることができないが、そこまで難しくない目標であれば、難しい目標に夢破れた後でも叶えることができる[…]
コメント:自己犠牲の是非(読みやすさB/面白さC)
ジッドは1947年ノーベル文学賞。
アリサという女性が、主人公との幸せな結婚を拒み、信仰に生きる話。信仰に篤くない人間が読むと、どうもアリサの行動が理解できないのだが、実際に過度な自己犠牲を批判した小説ともいわれる。印象に残る小説であることは確か。
78『不思議な国のアリス』ルイス・キャロル
読了した記憶はある。
79『オデュッセイア』ホメロス
コメント:ギリシャ神話入門(読みやすさC/面白さB)
読了したが、感想ブログにを書く気は今のところない。
言わずと知れた古代ギリシアの長編叙事詩。『イリアス』の後日談に当たる話だが、『イリアス』よりこちらの方が断然読みやすい(岩波文庫ではどちらも松平千秋氏が訳しているが、なぜだか読みやすさが断然違う。)。
ホメロス特有の表現(たとえば、相手の言葉に激昂した時の「何たる言葉が汝の歯の垣根を超えたことか…!」というようなセリフ)を知ることができて楽しい。
80『感情教育』フローベール
『ボヴァリー夫人』が有名な19世紀フランスの作家フローベールの自伝的小説。
81『侍女の物語』マーガレット・アトウッド
作者マーガレット・アトウッドは、現代カナダを代表する女性作家。
「侍女」と聞いて舞台が近世以前だと思う方もいるかもしれないが、間違いです。近未来を舞台にしたディストピア小説。
82『二都物語』ディケンズ
ロンドンとパリの二都をめぐる作品。『クリスマス・キャロル』などを除けばめちゃくちゃ長い長編小説が多いディケンズの中では、比較的手が出しやすい長さの小説。
83『予告された殺人の記録』ガルシア・マルケス
「予告された殺人の記録」は、1982年のノーベル文学賞受賞作家、ガルシア・マルケスの中編である。ガルシア・マルケスといえば『百年の孤独』の存在感が強すぎるが、この作品は作者自身が最高傑作と述べているほど、緻密に組まれた名作である。今回は、こ[…]
コメント:超緻密なルポルタージュ風小説!(読みやすさA/面白さA)
1位の『百年の孤独』に続き、ガルシア・マルケスがランクイン。「予告された殺人の記録」は、『百年の孤独』と違って長編というほどは長くない。独特の南米のリズム感はそのままに非常に精緻な作品で、丁寧に読んでいくと物語としても非常に面白い作品。読みやすいと評価したが、登場人物の整理は難解なので、上記の記事などを参考にしてほしい。
84『ペドロ・パラモ』フアン・ルルフォ
「面白いストーリー」と「面白い文学」は違う。 ーーということを最も強く実感するのは、中南米の小説を読んでいる時だ。 今回紹介するフアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』という小説は、ノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスやバルガス=リ[…]
コメント:二回読むと真価を発揮する小説(読みやすさB/面白さA)
84位は、スペインの作家フアン・ルルフォの『ペドロ・パラモ』。
1955年に発表されたマジックリアリズムの手法が用いられた本作は、スペイン語圏の作家であるガルシア・マルケスらにも大きな影響を与えた。この小説の特徴は「死者と生者が混淆した世界」と「時系列の混乱した語り」である。死者たちによる語りは理路整然としておらず、一度しか読まずに理解するのは不可能である。この小説は一回しか読まなかったら、読みにくいしつまらない小説であるが、二回読んだときに真価を発揮する。すごい小説。
85『西遊記』呉承恩
中国「四大奇書」の一。
孫悟空らが登場する、三蔵法師がインドに行く話。
86『薔薇の名前』ウンベルト・エーコ
86位はウンベルト・エーコ『薔薇の名前』。
NHKの番組「100分de名著」で紹介されているのを観て読んだ気になっている。もちろん原書も読んでみたいが、あまりに長いのでなかなか読むことができないでいる。
ちなみに私は「100分de名著」はよく観るが、この『薔薇の名前』が紹介された回は「100分de名著」屈指の神回だと思う。
87『三国志』羅貫中
吉川三国志は読了したが……
言わずと知れた、後漢の衰退・滅亡から魏・蜀・呉の三国の抗争と英傑の活躍を描いた歴史書。
88『虚栄の市』サッカレー
サッカレーは19世紀イギリスの作家。
ナポレオン戦争に向かう19世紀初頭のロンドンを描き、富裕層を風刺した長編小説。
89『親和力』ゲーテ
『若きウェルテルの悩み』『ファウスト』で知られるドイツの詩人ゲーテの作品。
90『若い藝術家の肖像』ジェイムズ・ジョイス
ジェイムズ・ジョイスの『若い藝術家の肖像』を読んだ。 最初に正直に感想を書くと、かなり難解であった。もちろん難解さを承知で読む人がほとんどだろうが、海外文学への入門として読むことはあまりおすすめしない。 とはいっても、ジェイムズ・ジョイ[…]
コメント:『ユリシーズ』を読む前に読むべし(読みやすさC/展開の面白さB)
90位はジェイムズ・ジョイス『若い藝術家の肖像』。
十分難解な小説だが、14位の『ユリシーズ』よりは短く、また作者ジェイムズ・ジョイスの精神的成長を描いている作品という点でテーマとしては分かりやすい。『ユリシーズ』を読む前に、こちらを読んでおくといいかもしれない。
91『死の家の記録』ドストエフスキー
あまりにも有名だが、ドストエフスキーは、かつて死刑囚であった。 若き日のドストエフスキーは、ペトラシェフスキーの主宰する社会主義サークルに所属し、皇帝(ツァーリ)の統治下にあって、社会の変革を目論んだために官憲に逮捕された。ペトラシェフス[…]
コメント:当時の監獄の意外と人間的な様子がわかり面白い(読みやすさB/面白さB)
このランキング5度目のドストエフスキーは『死の家の記録』。
ドストエフスキーには一般に五大長編と呼ばれているものがあって、このランキングではそのうち処女作の『未成年』以外の4作がランクインしている。
『死の家の記録』はドストエフスキーが思想犯として投獄されていたころの体験記と見聞録。小説の形を取っているが実際にはノンフィクション的な性格を持ち、いわゆる「五大長編」には含まれないが、ドストエフスキーの透徹した人間へのまなざしを読むことができる本である。
92『イリアス』ホメロス
コメント:ギリシャ神話がちょっと分かるようになるのは楽しい(読みやすさC/面白さC)
読了したが感想を書く気はない。
92位は、ホメロスの『イリアス』。ホメロスの叙事詩は79位の『オデュッセイア』に続いてランクイン。
ギリシャ神話に登場するアテナなどの女神、アキレウスやヘクトールといった英雄について知りたいなら読んで損はない。登場人物に二つ名がついていて、少年の心をそそられる。
93『風と共に去りぬ』マーガレット・ミッチェル
映画でも有名。
94『ナジャ』ブルトン
フランス文学の一番楽しく読める入門書は?ーーと聞かれたら、この鹿島茂『悪女入門』(講談社現代新書)を薦める。 この『悪女入門』という本、その名の通り男を誘惑し破滅させる「悪女」(ファム・ファタル)になるためのハウツー本なのであるが、そのテキ[…]
94位は、フランスの文学者アンドレ・ブルトンの『ナジャ』。原典は未読だが、鹿島茂『悪女入門』(講談社現代新書)でも触れられていたのが記憶に残っている。
ブルトンは、シュルレアリスムを創始した人物としても知られる。
95『V.』ピンチョン
ピンチョンといえば、絶対に公の場に顔を出さないことで知られている作家。ジョージ・オーウェル『1984年』(早川書房)に解説を寄せていた人物としても記憶している。そういえばこのランキングはオーウェルはランクインしていない。
ところでアメリカのバイデン大統領の好きな作家は、ピンチョンとジョイスらしい。二人とも私が読了できなかった作家なので、私とは趣味が合わないかもしれない……。
96『モロイ』サミュエル・ベケット
1969年ノーベル文学賞。ベケットは『ゴドーを待ちながら』などの戯曲も有名。
97『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ
死後80年近く経っているにもかかわらず、最近今まで以上に注目を集めている作家がいる。イギリスの女性作家、ヴァージニア・ウルフだ。 ウルフは「女性が小説を書こうと思うなら、お金と自分一人の部屋を持たねばならない」とした講演『自分ひとりの[…]
コメント:現代小説の傑作(読みやすさA/面白さB)
作者ヴァージニア・ウルフはイギリスの女性作家。代表作の『灯台へ』は、作者ウルフの家族をモデルにしたラムジー一家を取り巻くある一日と、その10年後の一日を描いた作品。話の展開が面白いというわけではないのだが、洗練された「意識の流れ」の作品で、現代文学の傑作である。ウルフはフェミニズム的な観点からも最近とくに着目されており、注目度が高まっている。
98『冗談』ミラン・クンデラ
ミラン・クンデラが2020年のフランツ・カフカ賞を受賞したらしい。フランツ・カフカ賞というのは、2006年に村上春樹が受賞したことで日本でもよく知られるようになった、チェコの文学賞である。 クンデラといえば、『存在の耐えられない軽さ』があ[…]
コメント:個人的おすすめナンバーワン(読みやすさA/面白さA)
98位はミラン・クンデラの『冗談』。クンデラは42位の『存在の耐えられない軽さ』に次いで2作目。『冗談』も、『存在の耐えられない軽さ』同様に共産主義体制下のチェコを描いた作品。当時の社会を感じることができるとともに、物語としても非常に面白く読むことができる作品。『存在の耐えられない軽さ』よりも平易なので、はじめてクンデラを読む人には『冗談』をお薦めしたい。
99『オブローモフ』ゴンチャロフ
ゴンチャロフは19世紀中葉のロシアの作家。代表作である本作は、典型的な貴族の世界を写実的に表現した作品。現在は岩波文庫は品切れのよう……
100『悪徳の栄え』マルキ・ド・サド
サディストの語源、サド。澁澤龍彦がこの本を翻訳してわいせつ物頒布罪に問われた『悪徳の栄え』事件は有名。
おわりに
最後に、一覧を置いておきます。ぜひ、気になった作品を読んでみてください!
- 1『百年の孤独』ガルシア・マルケス
- 2『失われた時を求めて』プルースト
- 3『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー
- 4『ドン・キホーテ』セルバンテス
- 5『城』カフカ
- 6『罪と罰』ドストエフスキー
- 7『白鯨』メルヴィル
- 8『アンナ・カレーニナ』トルストイ
- 9『審判』カフカ
- 10『悪霊』ドストエフスキー
- 11『嵐が丘』エミリー・ブロンテ
- 12『戦争と平和』トルストイ
- 13『ロリータ』ナボコフ
- 14『ユリシーズ』ジェイムズ・ジョイス
- 15『赤と黒』スタンダール
- 16『魔の山』トーマス・マン
- 17『異邦人』カミュ
- 18『白痴』ドストエフスキー
- 19『レ・ミゼラブル』ヴィクトル・ユーゴー
- 20『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン
- 21『冷血』トルーマン・カポーティ
- 22『嘔吐』サルトル
- 23『ボヴァリー夫人』フロベール
- 24『夜の果てへの旅』ルイ=フェルディナン・セリーヌ
- 25『ガープの世界』アーヴィング
- 26『グレート・ギャツビー』フィッツジェラルド
- 27『巨匠とマルガリータ』ブルガーコフ
- 28『パルムの僧院』スタンダール
- 29『千夜一夜物語』
- 30『高慢と偏見』ジェーン・オースティン
- 31『トリストラム・シャンディ』ローレンス・スターン
- 32『ライ麦畑でつかまえて』サリンジャー
- 33『ガリヴァー旅行記』スウィフト
- 34『デイヴィッド・コパフィールド』ディケンズ
- 35『ブリキの太鼓』ギュンター・グラス
- 36『ジャン・クリストフ』ロマン・ロラン
- 37『響きと怒り』フォークナー
- 38『紅楼夢』曹雪芹・高蘭墅
- 39『チボー家の人々』デュ・ガール
- 40『アレクサンドリア四重奏』ロレンス・ダレル
- 41『ホテル・ニューハンプシャー』アーヴィング
- 42『存在の耐えられない軽さ』ミラン・クンデラ
- 43『モンテ・クリスト伯』アレクサンドル・デュマ
- 44『変身』カフカ
- 45『冬の夜ひとりの旅人が』カルヴィーノ
- 46『ジェーン・エア』シャーロット・ブロンテ
- 47『八月の光』フォークナー
- 48『マルテの手記』リルケ
- 49『木のぼり男爵』カルヴィーノ
- 50『日はまた昇る』ヘミングウェイ
- 51『水滸伝』施耐庵
- 52『人間喜劇』バルザック
- 53『路上』ケルアック
- 54『危険な関係』ラクロ
- 55『木曜の男』チェスタトン
- 56『ゴリオ爺さん』バルザック
- 57『源氏物語』紫式部
- 58『幻滅』バルザック
- 59『うたかたの日々』ボリス・ヴィアン
- 60『スローターハウス5』カート・ヴォネガット
- 61『アブサロム、アブサロム!』フォークナー
- 62『ハワーズ・エンド』フォースター
- 63『魔術師』ジョン・ファウルズ
- 64『ムーン・パレス』ポール・オースター
- 65『アウステルリッツ』ゼーバルト
- 66『日の名残り』カズオ・イシグロ
- 67『悪童日記』アゴタ・クリストフ
- 68『ガルガンチェアとパンタグリュエル』ラブレー
- 69『若草物語』オールコット
- 70『回想のブライズヘッド』イーヴリン・ウォー
- 71『ある家族の会話』ナタリア・ギンズブルグ
- 72『トム・ジョーンズ』ヘンリー・フィールディング
- 73『大いなる遺産』ディケンズ
- 74『心は孤独な狩人』カーソン・マッカラーズ
- 75『緋文字』ナサニエル・ホーソーン
- 76『大地』パール・バック
- 77『狭き門』アンドレ・ジッド
- 78『不思議な国のアリス』ルイス・キャロル
- 79『オデュッセイア』ホメロス
- 80『感情教育』フローベール
- 81『侍女の物語』マーガレット・アトウッド
- 82『二都物語』ディケンズ
- 83『予告された殺人の記録』ガルシア・マルケス
- 84『ペドロ・パラモ』フアン・ルルフォ
- 85『西遊記』呉承恩
- 86『薔薇の名前』ウンベルト・エーコ
- 87『三国志』羅貫中
- 88『虚栄の市』サッカレー
- 89『親和力』ゲーテ
- 90『若い藝術家の肖像』ジェイムズ・ジョイス
- 91『死の家の記録』ドストエフスキー
- 92『イリアス』ホメロス
- 93『風と共に去りぬ』マーガレット・ミッチェル
- 94『ナジャ』ブルトン
- 95『V.』ピンチョン
- 96『モロイ』サミュエル・ベケット
- 97『灯台へ』ヴァージニア・ウルフ
- 98『冗談』ミラン・クンデラ
- 99『オブローモフ』ゴンチャロフ
- 100『悪徳の栄え』マルキ・ド・サド
▼関連記事▼