ビートルズの『Let It Be』と『Let It Be… Naked』はどちらがいいのか

忙しくても楽しめるのは、書籍と違う音楽の良さである。最近は何か用事をしながら音楽を聴くのを楽しみにしている。

保守主義者?(懐古主義者?)なので最近はThe Beatlesばかり聴いていたのだが、今まであまり好きでなかった『Let It Be』(曲じゃなくてアルバムの方)が、意外といいアルバムなのではないかと思うようになってきた。

1年以上前に書いたこんな記事だと、『Let It Be』をかなり酷評している。当時そう思っていたのは確かであるし、「ビートルズを初めて聴く人へのおすすめ度」という観点では未だにレット・イット・ビーを高く評価する気はないので、この記事を書き直すつもりはない。

ただ、当時よりは『Let It Be』というアルバムの良さがなんとなくわかってきた気がする。

 

なので改めて『Let It Be』と、このアルバムのもう一つのバージョンである『Let It Be… Naked』(レット・イット・ビー…ネイキッド)について書いてみようと思う。

Let It Be... Naked [Bonus Disc]

『Let It Be』と『Let It Be… Naked』

まず『Let It Be』および『Let It Be… Naked』というアルバムについて、軽く紹介しておきたい。

 

ご存知の方が多いとは思うが、『Let It Be』は、誰もが知る名曲「レット・イット・ビー」を表題曲に持つ、ビートルズのラストアルバムである。

このアルバムは、「ゲット・バック・セッション」という一連の演奏が元になっているが、このセッションの目的は以下のようなものであった。

崩壊しつつあるビートルズをまとめるため、メンバーたるポール・マッカートニーが「原点に返ろう=Get back」というコンセプトを掲げて「ゲット・バック・セッション」が行われた。そのため、デビュー当時のようにオーバー・ダビングを一切行わないアルバムを制作し、そのレコーディング風景を録画して映画にしようという試みが進められた。(Wikipediaより)

しかし、このセッションはすんなりとはアルバムにならなかった。

 

あらゆるプロデューサーによってミキシングが試みられるもうまくいかず、結局、先日逝去したフィル・スペクターというプロデューサーによってアルバムとしてまとめられ、発売された。これが『Let It Be』である。

ジョン・レノンらはフィル・スペクターの仕事を高く評価したが、ポール・マッカートニーは『Let It Be』の出来に激怒した

 

なぜなら、『Let It Be』は、当初の「ゲット・バック・セッション」が目指した「できる限り元の演奏に近い」というコンセプトを、完全に無視していたからである。

収録曲の『The Long and Winding Road』などは、名曲であるのは間違いないが、少し大仰な感も受けるだろう。この重層さがポールは気に入らなかったのだ。

そして、ポールは『Let It Be』発売から30年近く経ってから、「元のコンセプト」、すなわち「原点回帰のサウンド」で『Let It Be』を作り直そうとした。

 

こうしてできたのが、『Let It Be… Naked』(レット・イット・ビー…ネイキッド)である。「Naked」は「裸の」「素の」という意味。

出来る限り元の演奏に近づけた、「ゲット・バック・セッション」の当初のコンセプトのままのアルバムが、このアルバムなのである。


 

『Let It Be… Naked』の良さ

そんな『Let It Be… Naked』(以下『Naked』)であるから、やはり聴いてみると、元の『Let It Be』より優れている点はたくさんあるように思う。

曲順の素直さ

まずどこがいいのかと言うと、曲順である。

というより、もとの『Let It Be』は名盤ではあるのだが、曲順が悪いのだ。

「Two of Us」は個人的には好きな曲ではあるのだが、アルバム冒頭に持ってくる曲ではないと思う(もちろん、この異端さは裏を返せば良さでもあるのだが……)。

また、よく言われるのは「Let It Be」の前後の曲が酷いということである(Let It Beを引き立てていると言えばそうなのかもしれないが……)。

 

それに引き換え、『Naked』の一曲目は「Get Back」である。

「ゲット・バック・セッション」の「ゲット・バック」だ。

ベタな選曲だ。あまりにもベタな選曲だが、文句はないだろう。

そして、もとの『Let It Be』では「Let It Be」の前後を飾っていた駄曲(というと可哀想だが、完成された曲ではないことは間違いない)は排除され、代わりに良曲「Don’t Let Me Down」(もともとはシングルのB面という扱いをされていた)が入っている。

 

そして、『Naked』は、アルバムの最後が「Let It Be」なこともポイントである。この選曲も、冒頭曲同様になんの驚きのないものだが、これでいい。

統一感

そしてもう一つは、統一感である。

『Let It Be』では、荘厳な「The Long And Winding Road」などのせいで、素朴な「One Afte 909」などが「浮いた」感じになってしまっている。

『Naked』では、ポールの方針によってどの曲も素朴になっているから、素朴な曲が浮くということはない。

 

通して聴くアルバムとしては『Naked』の方が優れているのではないかと思う所以は、曲順と全体の統一感である。

『Let It Be』の良さ

しかし、『Naked』が素晴らしくて『Let It Be』が全然ダメかと言うと、そうではないようにも思う。

 

『Naked』を続けて聴いていると、だんだんと元の『Let It Be』が恋しくなってくるのである。

「Let It Be」のギターソロは、聞きなれた『Let It Be』のバージョンの方が、やはり優れている。

「The Long And Winding Road」も、『Let It Be』のバージョンが大袈裟に思えるのは常なのであるが、一曲単位での完成度はやはりこちらのフィル・スペクターのバージョンの方が高いようにも思う。

スタジオアルバムとライブアルバムのような違いが、『Let It Be』と『Naked』には存在している。

 

『Let It Be』は、統一感の欠けるアルバムなのは間違いない。やや「ビートルズらしくない」ところはあるが、それでも名曲揃いのアルバムであることに疑いの余地はない。


 

おわりに

結論を言えば、『Let It Be』も『Let It Be…Naked』も、どちらも優れたアルバムだということになるだろう。

 

個人的には『Naked』の方に軍配を上げたかったのだが、このところ『Naked』を贔屓して『Naked』ばかり聴いていたら、本の家『Let It Be』もだんだん恋しくなってしまったので、評価は保留ということにしたい。 

 

ただ、上述のように、アルバムの統一感という意味では『Naked』が間違いなく上であり、この評価が覆ることは(少なくとも私の中では)絶対にない。

 

『Let It Be』の統一感のなさが気に入らなかった方は、ぜひ『Naked』を聴いてみてほしい。

だが、一曲単位での完成度は『Let It Be』が上かもしれない。好みの問題ではあるが、かなり多くの人の同意を得ることができるのではないかと思う。

『Naked』の荒さが気に入らなかった方は、改めて『Let It Be』を聴いてみてほしい。

 

いうなれば、曲の『Let It Be』、アルバムの『Naked』ではないだろうか。

この2つのアルバムは、両方聴いていくうちに、双方のアルバムの良いところに気付く。そんなアルバムなのではないかと思う。

いずれにせよ、未聴の方はぜひ『Naked』を聴いてみてほしい。そして、それぞれの良さを体感してみてほしい。

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