クイーンと日本のつながりを象徴するアルバム『グレイテスト・ヒッツ・イン・ジャパン』

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二週間くらい前に、クイーン『Greatest Hits In Japan(グレイテスト・ヒッツ・イン・ジャパン)』が発売された。

 

一昨年の「ボヘミアン・ラプソディ」のヒットを受けて、クイーン+アダムランパードによって「ラプソディ・ツアー」というツアーが行われているが、この来日公演を記念したアルバムである。

 

クイーンは、本国イギリスよりも先に、日本で有名になったアーティストである。だから、クイーンと日本の関係は非常に強い。

このアルバムは、クイーンと日本の結びつきを象徴するようなアルバムだと思う。

収録曲について

昨年の年11月6日から11月25日まで、クイーンの日本版公式サイトで「あなたの1番好きなクイーンの楽曲を投票しよう!」という企画を行われていたらしい(恥ずかしながら当時は知らなかった、残念)。

その投票結果の上位曲が収録されているのが、今回のアルバムである。

 

収録曲は以下の通りで、右に書いたのは公式サイトでの得票数である。

曲順も、ちょうど順位通りである。

1位 Somebody To Love 1290票
2位 Don’t Stop Me Now  791票
3位 Teo Torriatte (Let Us Cling Together) / 手をとりあって 484票
4位 Spread Your Wings 474票
5位 Killer Queen 469票
6位 The Show Must Go On 429票
6位 Bohemian Rhapsody 429票
8位 ’39 420票票
9位 The March of the Black Queen 360票
10位 Good Old Fashioned Lover Boy 326票
11位 Keep Yourself Alive 300票
12位 RADIO GA GA  291票

収録曲の特徴

今回の選曲は、『ジュエルズ』などの今までの「世界標準」のベストアルバムとはかなり趣が異なる。

 

フレディ・マーキュリー生前のクイーン最大のヒット曲は「Another One Bites the Dust」だといわれているが、この曲は収録されていない(ランキング17位)。

同曲はアメリカでチャート一位を獲得した曲であるが、同じく全米チャート一位を獲得した「Crazy Little Thing Called Love」は圏外(40位以下)であり、「アメリカン」な曲が入っていないのは面白い。

 

それに、スポーツでもおなじみの(アメリカでも人気が高い?)「We are the Champions」(19位)、「We Will Rock You」(圏外)も入っていない。

 

一方、「イギリス的」な曲が入っているというわけではない。デヴィッド・ボウイとのコラボ曲の「Under Pressure」(21位)などは、選出外となった代表例である。

 

では、代わりに選出されているのは、どのような曲だろうか。

 

映画『ボヘミアン・ラプソディ』で象徴的な役割を果たした「Somebody To Love」が第一位なのは興味深い。

曲の人気もさることながら、アルバム最初はこの曲!と思って投票した方も多かったのでは?と思わせる。

映画のおかげで再評価を受けた可能性がある曲としては、「The Show Must Go On」「Bohemian Rhapsody」「Keep Yourself Alive」「RADIO GA GA」が挙げられる(いずれも劇中歌として使用された曲)。

 

しかし、映画『ボヘミアン・ラプソディ』とは無関係の曲も多い。

やはり、このアルバムに収録されている曲は、日本向けの曲が多いのである。

 

一番特徴的なのは、3位のTeo Torriatte (Let Us Cling Together) / 手をとりあって」である。

題からもわかるように、一部日本語で歌われている曲である。

クイーンの人気に火が付いたのは日本が最初だったというのは有名だが、この曲はバンドと日本の深いつながりを示しているのがこの曲であり、この曲が上位に選出されているのは日本ならではだろう。

決して贔屓でなく、曲自体も日本人の琴線に触れる名曲である。

 

ここまで言及していない曲は、コアな曲として今までのベストアルバムにはあまり収録されてこなかった曲だ。

 

4位に「Spread the Wings」があるのも、コアなファンが投票したことがわかる。

(この曲は、映画『ボヘミアン・ラプソディ』でも台詞だけ出てくる)

ピアノのイントロから始まる、美しい旋律の曲である。作曲はジョン・ディーコンで、歌詞も、臆病だった若者が羽ばたいていくという感じの内容で、良曲である。

 

個人的に好きなのは、8位の「’39」(サーティナイン)である。この曲はギターのブライアン・メイの教養を反映した名曲である。

ブライアン・メイは天文学の博士号を持っているほどのインテリなのだが、この曲は「光速に近いスピードで進む宇宙船の中では時間の進みが外部より遅くなる」という、いわゆる「浦島太郎効果」とその悲哀について歌っている曲である。

なかなか面白い歌詞で、旋律も面白いので是非聞いていただきたい。

曲順が良い!

クイーンのファンの投票の結果を踏まえ、機械的に上位から並べているのにもかかわらず、曲順が良い。

 

初めて聴いたときには、しっかりと編成された曲順のアルバムだと思うほどである。

 

クイーンの日本人による日本人のためのベストアルバム

ちなみにこのアルバムは、ジャケットも「和テイスト」である。

 

アルバム下部に「SELECTED BY JAPANESE FANS」(日本のファンによる選曲)と明記されているのも、日本ファンにとってはうれしいところだろう。

日本のファンなら、是非手元に置いておきたいアルバムである。

 

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