映画『アネット』感想ー異端児スパークスによる異色のロック・ミュージカル

アネット

スパークスというアメリカのバンド(というかデュオ)がある。

スパークスは1960年代(!)から活動している、ロン・メイルとラッセル・メイルという兄弟によるデュオだが、二人とも健在でいまだに創作意欲は旺盛で、ここ最近日本でも話題にあがることが増えている。

2021年には彼らについてのドキュメンタリー映画『スパークス・ブラザーズ』が作成された(日本での公開は2022年)。

そして、ロン・メイルとラッセル・メイルが原案と音楽を手掛ける映画『アネット』も、2021年に公開された(日本での公開は2022年)。

両方見たかったのだが、とりあえず『アネット』だけ見ることができたので、簡単に感想を書きたい。

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スパークスというデュオ

ところで本題に入る前にスパークスについて書いておきたい。

私がスパークスを好きになったきっかけは、彼らの『Kimono My House』(キモノ・マイ・ハウス)というアルバム冒頭曲の「This Town Ain’t Big Enough for Both of Us」(ディス・タウン・エイント・ビッグ・イナフ・フォア・ボス・オブ・アス)を聞いて衝撃を受けたからである。

最近(2022年5月)、AppleのiPad AirのCMソングにも使われており、耳にした方も多いと思う。

この曲は1974年の曲だが、前衛的な曲のつくりは50年近く経った今でも新しい響きを持っている。

ちなみに私は最初この曲を聞いたときボーカルは女性だと思ったが、動画を見ていただければわかる通り、ラッセル・メイルがファルセットで歌っている。

なぜ私がスパークスのこのアルバムを聞こうとしたのかというと、私はもともとデヴィッド・ボウイが好きで、デヴィッド・ボウイの『Scary Monsters (And Super Creeps) 』(スケアリー・モンスターズ)の冒頭曲に出てくる日本語のセリフをしゃべっている日本人女性が『キモノ・マイ・ハウス』のアルバムジャケットに登場しているから……という理由なのだが、これは余談である。

ちなみに、個人的にこのアルバムのほかに好きなスパークスのアルバムは、スパークスとフランツ・フェルディナンドが合作した『FFS』である。こちらは2015年のアルバムで、サウンドも新しくおすすめ。

Ffs
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映画『アネット』感想

前置きが長くなったが、『アネット』という映画について書きたい。

私はスパークスのファンとして、スパークスの楽曲目当てで見に行ったので、大変楽しめた。

映画はミュージカルのような感じで、全編通して基本的に台詞は歌である。ミュージカル映画の中でも、かなり徹底している方だと思う。

キャストも主演のアダム・ドライバー(スターウォーズのカイロ・レン役)のほか、ヒロインのマリオン・コティヤールがめちゃくちゃ歌が上手い。オペラ歌手役だから上手くないと困るのだが、ものすごく上手かった。

というわけで、音楽を楽しむミュージカルとしては私がスパークス好きであるという贔屓目を加えたら満点である。

また、ストーリーはダークファンタジーぽさがあり、ミュージカルとしては珍しいタイプだと思った。

ただ、ストーリーの面白さを求める観客であれば、少し物足りなさを感じるのかなとは思った。納得のいかない展開などはないのだが、逆に言えばある程度筋は予想できたので。

ただ、この作品はストーリーというか演出上に一つの大きな謎があって、それを考察する楽しみは十二分にある。(ネタバレになるので書かないが、見た方はおわかりだろう。最初見たときにぞっとするあの演出のことである)

というわけで、この映画の感想としては、スパークスをもとから知っている人には問答無用でおすすめである。

スパークスの楽曲を知らない人も、興味を持ったらぜひ『アネット』を見てみてほしい。

興味がない人も、とりあえず以上で紹介したスパークスの楽曲を聴いてみてほしい。スパークスファンが少しでも増えることを願っている。

そして楽曲に興味を持っていただけたら、レオス・カラックス監督の映画『アネット』もよろしければぜひ観てほしい。

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