第一次世界大戦のドキュメンタリー映像をカラー映像に着色した、『彼らは生きていた』They Shall Not Grow Oldという画期的な映画がある。
リアルに第一次世界大戦の戦場を知りたいという方には、是非見ることをお薦めしたい映画である。今回は、この映画について紹介したい。
作品概要
- 邦題『彼らは生きていた』
- 原題:THEY SHALL NOT GROW OLD(ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド)
- 公開日:2020年1月25日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
- 製作・監督:ピーター・ジャクソン
- 配給:アンプラグド
作品の特徴
この作品は、第一次世界大戦の終戦(1919年)から100周年の節目に合わせて、2018年にイギリスで作られた作品である。
「帝国戦争博物館」(Imperial War Museum。イギリス国内に全部で五つある戦争関連の博物館の総称)の全面協力のもと、帝国戦争博物館に保存されている記録映像を復元・着色することによって現代によみがえったドキュメンタリー映画である。
ナレーションも全て元軍人によるもので、オーラルヒストリーとしても記録的価値が高い。
監督は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどで知られる名匠ピーター・ジャクソン監督。
2019年度のアメリカ・ドキュメンタリー部門ではNo.1ヒットを記録し、映画批評サイトのロッテントマトにて驚異の100%フレッシュを獲得、同サイトの2019年度優秀映画ランキングで全ジャンルにおいて1位を獲得するなど高い評価を受けているという。
あらすじ
この映画は第一次世界大戦を舞台にしたドキュメンタリーないしオーラルヒストリーである。よって、あらすじと表現するのは少し違うが、場面展開を大まかに説明すると次のようになる。
(ネタバレあり、若干記憶があいまいな部分もあるがご容赦いただきたい)
第一次世界大戦が開戦する場面から始まる。当時の民衆にとって戦争は他人事のようなものであり、宣戦布告当日はドイツチームとラグビーの試合・会食を続けたというエピソードは有名だが、当事者の口から語られているのは興味深い。
しかし、だんだんと市民は戦争ムードに入っていく。「軍隊に入らなければ臆病者」だと煽られて、若者はどんどん軍隊に入っていく。両親などの中には止めるものもあったが、逸る若者の気持ちを留めることはできなかったのである。
軍隊に入った彼らは、厳しい訓練に早くも入隊を後悔するものもいたが、もう遅かった。そして彼らは戦場へ送られる。
戦場では一時の平和などもあったが、泥沼化すると戦場は悲惨さを増す。特に相手の塹壕を突破しようとする作戦で失われる人命の多さ、作戦での人命の軽さ、当事者の兵卒たちの置かれた状況の過酷さは、言葉では言い表すことができない。
兵卒たちは、何のために戦っているのかを敵も味方も見失っているのにもかかわらず、互いに殺しあうのである。
当事者から語られるその言葉の重みと、実際の遺体などの映像には、言葉を失うのみである。
感想
しかし、どちらかと言えばこの映画のメッセージは、戦後の出来事にある。
戦場はあまりに過酷で、一般市民には彼らの経験・感情はほとんど理解されなかったのである。
これは現代の我々も同じではないか。現代に生きる我々は、戦場の悲惨さを理解していない。そのことを第一に自覚する必要がある。
レマルク「西部戦線異状なし」などの文学作品でも第一次世界大戦の悲惨さは描かれているが、今の若者にはほとんど読まれていない。戦争を体験していない我々が戦場の悲惨さを少しでも理解するのに、この映画は一助となる。
なお、この映画は記事投稿部現在、Amazon Prime Videoで視聴可能である。
映画館で見るには重苦しい映画かもしれないが、家で見る分には重苦しさは軽減されるだろう。ぜひ、多くの人に見てほしい傑作である。
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