- 2020年5月25日
大学院生が、水月昭道『高学歴ワーキングプア 「フリーター生産工場」としての大学院』を読んで自戒する
私は現在、文系の大学院修士課程の学生であるが、なかなか厳しい道であることを自覚している。 そうというのも、一般に文系で修士・博士まで進んだ学生というものは、一部が大学教授の職を得られるほかは、社会的栄達と全く無縁の生涯を送ることになるからである。自殺率も非常に高まることが知られている。 文系よりは多少ましだと思うが、研 […]
私は現在、文系の大学院修士課程の学生であるが、なかなか厳しい道であることを自覚している。 そうというのも、一般に文系で修士・博士まで進んだ学生というものは、一部が大学教授の職を得られるほかは、社会的栄達と全く無縁の生涯を送ることになるからである。自殺率も非常に高まることが知られている。 文系よりは多少ましだと思うが、研 […]
私は漢文がものすごく好きなのだが、世の中には漢文が嫌いな人も多いようで悲しい。 この原因は、おそらく句法の暗記などのめんどくささがあるだろう。確かに句法の暗記というものは面倒である。 しかし、そのような「めんどくさい」技能を少し頑張って習得すれば、多くの中国の古典を読めるようになるというのが漢文の一番の魅力ではない […]
ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』といえば、「知能を高めることが幸福なのか?」といった「幸福」について問うているSF作品としてや、ラストの場面に感動する心温まる作品として、また文学的には、主人公の「手記」という形をとることで、主人公の知的水準の推移の表現を試みた作品としても知られている。 しかし、私はこの作品 […]
家の本棚にある中公新書のバックナンバーを見ていたら、異様に番号が若い本がいくつかあった。 その一つが、この三田村泰助『宦官―側近政治の構造』ーー通し番号で7冊目の中公新書ーーである。(もう一つは宮崎市定『科挙―中国の試験地獄』(中公新書15)だった) 確かに古い本ではあるのだが、現代においてもこの本の持つ面白さ・興 […]
岩波新書には多少「お堅い」イメージがあるが、もちろん例外もある。 その最たる例が、手塚治虫『ぼくのマンガ人生』だろう。 この本は、日本を代表する漫画家・手塚治虫の講演をまとめた本であり、最後の30ページほどはマンガであることもあって非常に読みやすい本である。 ーーしかし、やはりこの本は岩波新書として相応しい、メッセージ […]
カズオ・イシグロの最高傑作は? と聞かれたら、この『わたしを離さないで』を推す人は多いのではないだろうか。 私は正直に言うとこの問いには『日の名残り』と答えてしまうのだが、『わたしを離さないで』も名作であることには間違いないし好きな作品である。 だが、『わたしを離さないで』は、どうしても読後に気味の悪さが残る。それはな […]
最近、各書店の新書売り上げランキングなどで、池上俊一『動物裁判 西欧中世・正義のコスモス』(講談社現代新書)という本が上位にランクインしていることが多い。 この本は30年も前の本なのであるが、どうやら、ラジオ番組をきっかけにある書店が売り出したら爆発的に売れ出したらしい(ソースは講談社現代新書のサイト)。 この「再評価 […]
フランス文学の一番楽しく読める入門書は?ーーと聞かれたら、この鹿島茂『悪女入門』(講談社現代新書)を薦める。 この『悪女入門』という本、その名の通り男を誘惑し破滅させる「悪女」(ファム・ファタル)になるためのハウツー本なのであるが、そのテキストはフランス文学なのである。 フランス文学に登場する代表的「悪女」を教科書にし […]
老人ホーム(宿泊ありのデイサービス)でボランティアをしたことがある。 実の子どもたちもほとんど世話をしに来てくれないようなお年寄りを目の当たりにして、心が痛んだ。ーーそのようなお年寄りの方々も、若いときは人並み以上に子どもに愛情と金銭を注いだはずなのだ。 そのような姿を見て、私はオノレ・ド・バルザック『ゴリオ爺さん』を […]
ライナー・マリア・リルケの『マルテの手記』は、長編小説というよりは詩である。 作家志望だけど売れない青年の、悩みと回想をひたすらに吐露したような作品で、ストーリー性はない。 しかし、ストーリー性がないからといって、その作品が面白くないわけではない。 ともすれば精神を病んでいそうな青年の紡ぐ、美しい言葉の数々に、共感でき […]