- 2020年4月17日
- 2022年9月14日
カズオ・イシグロ『日の名残り』あらすじ・感想ー人生の哀しさと楽しさを描いた名作
小説の主人公というものは、並外れた知性や洞察力の持ち主であることが多い。でも、カズオ・イシグロの『日の名残り』(土屋政雄訳)は、この原則にまったく反する。 「普通の人」が人生の夕暮れに差しかかったときに、ふと自分の人生とは何だったのかを考える。『日の名残り』は、その哀しさを軽妙に描きつつ、また残りの人生の楽しさとは何な […]
小説の主人公というものは、並外れた知性や洞察力の持ち主であることが多い。でも、カズオ・イシグロの『日の名残り』(土屋政雄訳)は、この原則にまったく反する。 「普通の人」が人生の夕暮れに差しかかったときに、ふと自分の人生とは何だったのかを考える。『日の名残り』は、その哀しさを軽妙に描きつつ、また残りの人生の楽しさとは何な […]
20世紀に書かれた最高の英米文学は? というランキングで、たいてい上位に君臨するのは、ジョイスやスタインベックなど日本でも馴染み深い作家の本である。 だが、アメリカ人がこのようなランキングを作成すると、たいてい上位にハーパー・リーの『To Kill A Mockingbird』という本が上位にランクインする(例えば、ラ […]
現代作家で誰の文章が好きかと聞かれたら、森見登美彦と答える。 森見登美彦の文体はやや古風なところがあり、面白いし独特なリズム感が大好きな作家である。そんな森見登美彦の文体に大きな影響を与えたのは、内田百閒だという(出典:作家の読書道:第65回 森見 登美彦さん)。 というわけで、内田百閒の随筆である『百鬼園随筆』を読ん […]
ハードボイルド小説とは何か? この問いに最も的確に答えてくれる作品は、レイモンド・チャンドラー『ロング・グッドバイ』(村上春樹訳。清水俊二氏による旧訳では『長いお別れ』)なのではないかと思う。 私は特にハードボイルド小説を愛好しているというわけではないが、この『ロング・グッドバイ』は、男の友情と哀しい別れの影が付きまと […]
ジェーン・エアといえば、古典的・典型的なシンデレラ・ストーリーと思われている人も多いだろう。 それは一面では誤りではないのだろうが、この古典的名作をそのように表層的にしか読まないというのには個人的には反対である。『ジェーン・エア』は、作品が書かれた当初にどのような意義があり、また現代においてはどのように読むべきなのかを […]
20世紀に書かれた最高のイギリス文学は? というランキングで、たいてい1位に君臨するのが、このジョージ・オーウェル『一九八四年』である。 この作品は、いわゆる「ディストピア小説」である。その後のディストピア小説に大きな影響を与えたのはもちろん、政治思想にも大きな影響を与えている小説である。 今回は、この小説の示唆すると […]
私は大学院生である。それも、世にも珍しい文系大学院生である。 文系大学院生になってから、いつになったら定職に就けるのか不安で不安で仕方がない。ならば大学院など行かなければ良いではないかといわれそうだが、そういわれるとしんどい。 大学院生は大半が研究者(研究職、大学教授など)を目指すわけだが、その競争は熾烈を極める。ポス […]
荒木飛呂彦『荒木飛呂彦の奇妙なホラー映画論』を読んだ。著者はご存知の通り、「ジョジョの奇妙な冒険」の作者である。 この本は、「ホラー映画の入門書」「おすすめのホラー映画の載ったハンドブック」としても面白いし、また、荒木飛呂彦先生がどのような作品からインスピレーションを得ているのかという点でも非常に興味深いものである。 […]
貴方はチョコレートが好きですか? 好きならば、なぜ好きなのですか? どのようなチョコレートが好きなのですか? もしかすると、この上野聡「チョコレートはなぜ美味しいのか」は、この問いに対して科学的な答えを与えてくれるかもしれない。チョコレートをはじめとしたさまざまな食品の結晶構造を解析し、その理想形を追求する「食品物理学 […]
ガブリエル・ガルシア・マルケス「百年の孤独」という作品がある。同名の酒の元ネタである(多分)。 この作品は、「20世紀の傑作」ランキングなどでたいてい上位にランクインする作品(特にこのランキングでは第一位にランキングしている)であり、その価値は広く認められている。私自身もこの作品は非常に好きである。 しかし、一体「どこ […]